トラック運転手と聞くと過酷で大変な仕事というイメージをいだく人は多いかと思います。実際に、運送業界は人手不足による長時間労働が蔓延しており、トラック運転手の過労死が度々起こっているのが現状です。
この記事では、こうした運送業界の現状を踏まえ、トラック運転手が過労になる理由や過労にいならないための予防方法について詳しく解説していきます。
まずは、トラック運転者が過労になる理由について見ていきましょう。
トラック運転手が過労になる5つの理由
過労になる理由については主に以下の5つが挙げられます。
理由1|深刻な人材不足
トラック運転手は2006年の92万人をピークに年々減少を続け、2027年には72万人にまで減少し、需要に対して24万人も不足すると言われています。
そのため、一人あたりの仕事の負担が大きくなり、結果として過労につながっている状況となっています。
理由2|労働時間が長い
厚生労働省の「賃金構造統計調査」によると、トラック運転手の労働時間は以下のようになっています。
- 所定労働時間:176時間
- 残業時間 :34時間
- 合計 :210時間
対して、全業界の労働時間(所定労働時間と残業時間の合計)は178時間となっており、トラック運転手は全業界の平均よりも約30時間も長い時間を働いていることになります。
労働時間が長くなる原因はやはり、人手不足による負担増加が大きく影響していると言えるでしょう。
理由3|休日が少ない
平成27年に国土交通省が行った「トラック運送状況の実態調査結果」によると、7日間のうちに休日が1日もなかった人の割合が9.8%にもなることが判明。
トラック運転手の約1割が、週に1日の休みも与えられない過酷な状況で働かされていることになります。
理由4|手積み、手下ろしの作業が過酷
荷積み、荷下ろしに関しては運送会社や取り扱う荷物によっては手積み、手下ろしで行わなければならないことがあります。
手積み、手下ろしの作業は腰や体への負担も大きいため体力を消耗しやすく、夏場などは熱中症になることもあるなど、過酷な業務のひとつでもあります。
理由5|会社が退職させてくれない
「代わりがいない」
「いま辞められるとみんなに負担がかかる」
「仕事が回らなくなる」
人手不足を理由にこのような圧力をかけて辞めさせない会社も少なからず存在します。
当然、正当な理由なく辞めさせないのは違法ですので無視して問題ありません。しかし、責任感の強い方などは罪悪感で辞めることができず、結果として消耗してしまうことがあります。
過労を疑う3つのサインを知っておこう
過労になると心身に負担がかかるため、様々な症状が起こり始めます。以下のようなサインが出た場合には注意が必要です。
サイン1|疲れが長時間取れない
疲れが取れないのは体から「休め」のサインが出ている状態です。このサインを無視し続けると過労の症状である慢性的な疲労が続くようになり、脳梗塞や心疾患、最悪の場合、過労死につながる恐れもあります。
サイン2|身体的・精神的ストレスを感じている
過労は心身に大きなストレスを与え、限界を超えるとうつ病になる恐れがあります。うつ病になると働けなくなったり自殺に追い込まれたりすることもあるため、ストレス状態が続く場合は過労を疑い対策を取ることが大切です。
サイン3|体調を崩しがちになる
心身の疲れは睡眠をとることによって回復しますが、過労が続くとそれができなくなります。
めまいや頭痛、吐き気といった症状が現れ体調が崩れやすくなっている場合、過労である可能性が高く注意が必要です。
過労にならないための4つの予防方法
過労が蓄積されれば、心も体も疲れ果て過労死につながる恐れもあります。そのため、過労にならないための予防方法をしっかり知っておくことが大切です。ここからは過労の予防方法について見ていきましょう。
方法1|就職・転職段階で企業の福利厚生や残業時間の上限について確認する
働き方改革による法改正で「時間外労働の上限規制」の適用が2019年4月より開始。
運送業界に関しては猶予期間が設けられているため2024年からの適用となるため、会社によってはすでに残業時間の見直しに向けた取り組みを始めているところもあります。
就職・転職の際には会社が残業時間短縮の対策を取っているかの確認をしておくことが重要です。また、運送業界ではいまだに社会保険未加入の会社もあるため、福利厚生に関してもしっかり確認をしておくことが大切です。
方法2|過労のサインに気づいたら、抱え込まず家族や友人に相談する
一人で悩みを抱えていると、「自分に原因があるからいけないんだ」などと思い込んでしまうことがあります。
過労によって心身に影響が出始めてからでは手遅れになることもあるため、少しでもおかしいなと思ったら一人で抱え込まずにまずは家族や友人に相談してみましょう。
方法3|会社がブラックな働き方を強制する場合は労働基準監督署に相談する
過度な長時間労働や頻繁な休日出勤など、ブラックな働き方を強制される場合は迷うことなく労働基準監督署に相談するのも一つの手段です。
会社側に問題があると認められた場合、強い権限を用いて問題に対処してくれます。相談する際は、勤務時間や業務内容を記載したメモなどの証拠を用意しておくとスムーズに話が進みます。
方法4|転職活動をする
働き続けることが限界になったり自分の身に危険を感じたりした場合は思い切って転職活動を始めましょう。
自分が辞めることで迷惑がかかると感じるかもしれませんが、一番大切なのは自分自身が健康であることです。無理をして過酷な環境で我慢する必要はありません。
まとめ
運送業界の慢性的な人手不足によってトラック運転手の負担は大きくなり、その結果として過労につながっています。過労になると心身に様々な影響を及ぼすだけでなく、最悪の場合、過労死する危険性もあります。
現在、トラック運転手として働いている方やこれからトラック運転手目指す方は、この記事を参考に無理のない働き方を心掛けていきましょう。