環境問題の取り組みとして、事業活動における環境保全が重要視されています。取り組みを実施していると認められた運送事業者に与えられるのが、グリーン経営認証です。この記事では、認証制度を取得する手順やメリット、認証後の手続きなどについて解説していきます。
グリーン経営認証制度の目的
グリーン経営認証制度の主な目的は、以下のとおりです。
- 環境負荷を減らす
- 環境を改善・保護するための自主的な取り組みをうながす
環境保全に向けた取り組みの評価・改善を繰り返し行うことにより、自ら環境保全に取り組む運送事業者を増やすことも目的とされています。
誰に対する制度か
グリーン経営認証制度は運送事業者に対する制度です。対象の運送事業者には、トラック輸送業種だけでなく、荷物を保管する倉庫業者も含まれています。
どこが認証するのか
グリーン経営認証は、「交通エコロジー・モビリティ財団」(「エコモ財団」)という公益財団法人が認証機関となっています。
エコモ財団によって認証基準に達していると判断されると、グリーン経営認証を受けることができます。
グリーン経営認証を取得するメリットとデメリット
環境保全のために積極的にグリーン経営認証を取得していきたいところですが、認証を取得することによって得られるメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
グリーン経営認証取得のデメリット
グリーン経営認証を取得するデメリットには、主に以下のようなものがあります。
- グリーン経営をするための体制作り、従業員教育に労力がかかる
- 申請書類やチェックリストを作成する手間がかかる
- 認証を受けるための費用がかかる
認証を取得するためにはグリーン経営への取り組みを行い、基準を満たしていることを書面で示さなければなりません。そのためには従業員への教育と組織作りが必要です。
また、申請のための書類作成が必要となるため、たいへんな時間や労力を要し、取得のための費用も必要となります。
グリーン経営認証取得のメリット
グリーン経営認証を取得するための基準項目にはエコドライブ、車両の点検・整備の実施などがあります。取得に向けて取り組むことで、以下のようなメリットを得ることができます。
- 燃費が良くなり、CO2の排気を減らすことができる
- 危険走行をしなくなり、事故を減少させることができる
- 車両の故障が減り、経費を減らすことができる
認定取得の取り組みにより社会的評価が上がり、環境面や経営面でのメリットにもつながります。交通事故削減につながる取り組みも行うため、トラック運送事業者には大きなメリットがあると言えるでしょう。
グリーン経営認証に関わる準備と手続き
次に、グリーン経営認証を申請する場合に必要な準備や手続きについて時系列で見ていきましょう。
まずは仕組みと体制の整備を整える
グリーン経営認証を取得するには、認証基準項目の実現に向けての仕組み作りや、体制の整備をしなければなりません。そのために、取り組みを中心となって進めていく環境管理責任者の配置が必要となります。
取り組みの実施
環境管理責任者を中心に、環境経営の取り組みを実施します。同時に、これらの取り組み全般に関して取り組み状況が把握できる書面を作成しなければいけません。
取り組む内容には、環境保全のための仕組み・体制の整備やエコドライブの実施などさまざまな項目があります。事務所内での取り組みも認証基準に盛り込まれているため、従業員が一斉に取り組むことがカギとなります。
申請書、チェックリストの作成と提出
取り組みが認定基準に達したら、「グリーン経営認証審査申請書」と「チェックリスト」をエコモ財団に提出します。
実地審査の実施
事前にエコモ財団から審査日・担当審査員などが通知されます。審査当日は審査員が来訪し、認証基準に適合しているかの審査を受けます。
認証基準を満たしていない項目があれば「不適合報告書兼是正処置報告書」が渡されます。この場合、不適合項目の改善内容を是正処置報告書に記入し、審査日から60日以内に提出しなければなりません。
審査結果判定
審査の結果通知と、審査料金と登録料金の請求書が郵送されてきます(不合格の場合は審査料金のみ)ので納付期限内に金融機関で振り込みましょう。
登録証交付
エコモ財団の審査を通過すると事業者に登録証が交付されます。
登録の公表
登録が決定すると、エコモ財団のホームページ上の「グリーン経営認証登録された環境にやさしい運送事業者」として掲載されます。
認証を維持するための「定期審査」の実施
認証登録後も認証を維持していくためには、年1回の「定期審査」を受ける必要があります。定期審査の提出書類は下記のとおりです。
- 定期審査申請書
- 定期審査用チェックリスト
これらの書類を登録から1年経過する日のひと月前までに提出することが決められており、提出した書類はエコモ財団によって審査されます。
審査基準を満たしている場合、グリーン経営認証登録は継続となります。基準を満たさない場合は、不適合項目の改善内容を是正処置報告書に記入し、審査日から60日以内に提出しなければなりません。
グリーン経営認証を取得するための費用
新規取得時は審査料金として約8.5万円程度、登録料金は約7万円程度の費用が必要となります。また、更新時は登録手数料が不要であることと更新料が減額になることで、新規取得時よりも費用が少なくなります。
補助金や助成金について
グリーン経営認証は、環境の改善や保護を目的にした認証制度であることから、自治体や全国トラック協会による助成金制度が設けられています。
助成される対象や金額は助成金の申請先によって異なりますが、助成金制度を利用することで取得費用を抑えることができるため、認証取得のハードルを下げるためにも各種補助金・助成金を活用しましょう。
まとめ
グリーン経営認証取得のため、環境保全に向けた取り組みをすることが社会的信用度の上昇や経費の削減といったメリットを生み出します。環境問題に真剣に取り組むべき今、必要な制度と言えるでしょう。