運送業の営業所は市街化調整区域には建てられない?例外は?

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運送業の営業所は市街化調整区域には建てられない?例外は?

kglo-kawai

運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

運送業を営むためには、国の審査を通過し、事業許可を取得する必要があります。それにはドライバーなどの「人」や車両や駐車場、営業所などの「物・施設」、開業準備や事業運営に必要となる「資金」に関する5つの要件をすべて満たさなければなりません。

物流という仕事の持つ社会的役割が大きい分、5つの要件の設定基準も厳しく、クリアするのは容易ではない中で、特に対応に苦慮する人が多いのが「物・施設」に関する要件です。

それは、駐車場や営業所について、もともと関係法令によって細かく規制されていることに加え、例外事項もあるため、なかなか基準に合致した物件が見つからないのが理由のひとつ。

また、ようやく見つけた物件が要件を満たしているのかをどうか判断するのも、素人にとっては困難です。

そこでこの記事では、多くの事業主が手を焼く営業所の要件の中から、都市計画法に関連する部分だけをピックアップし、わかりやすくまとめました。

営業所を建ててはいけない場所や例外が認められるケースについて詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。

 

運送業の営業所を建てられない区域

運送業の営業所を建てるなら、まずは場所探しから始めなければなりません。しかし、建築物を建てることそのものが認められていないエリアも存在しますので、ご注意ください。

 

農地法・都市計画法等の関係法令に抵触しないことが条件

営業所用地を選ぶ際に考慮すべきポイントはいくつもありますが、法令に抵触しないことが大前提です。日本の国土には、計画的に都市開発を行うことを目的として、「市街化区域」「市街化調整区域」「区域区分非設定区域」などの区分が設定されています。

そのうち「市街化調整区域」では、原則として一切の建物の建築や新たな開発を認めておらず、運送業の営業所も例外ではありません。

また、建築可能な市街化区域であっても、建築確認を取らなければならなかったり、利用目的によって建築制限を受けたりすることがあります。そのため、本当に営業所を設置しても法的問題はないか、慎重に確認することが大切です。

加えて、農地法に抵触していないかどうかも確認しておきましょう。農地法とは、農業用地を農業以外の目的で使用することを厳しく制限する法律です。登記上の地目が「田」や「畑」となっている場合は、宅地や事務所用地などとして利用することはできない決まりとなっています。

もし建設予定地が農地だった場合は、農地転用手続きが必要です。農業委員会での審査完了や都道府県知事・農林水産大臣の許可取得までには、申請してから短くても1ヶ月程度、長ければ1年以上かかるとも言われていますので、スケジュール管理には十分気をつけてください。

 

市街化調整区域に営業所は建てられるのか

前項で説明した通り、市街化調整区域には「原則として」一切の建物を建てることができません。しかし、「原則」には「例外」がつきもの。中には「例外」が認められ、営業所を建設できる場合もあります。

では、例外的に営業所建設を認められるのはどんなケースでしょうか?

 

市街化調整区域とはなにか

例外となる要件を説明する前に、市街化調整区域について解説しましょう。市街化調整区域とは、都市計画法において「市街化を抑制すべき区域」と定義されています。

既存の建築物と田園地帯で構成されるように計画されたエリアで、一部の農林水産業施設の整備や公的機関による土地区画整理事業のみ行うことが可能です。

 

例外|市街化調整区域でも建てられるケース

原則として開発行為が許されないエリアですが、次のような場合には例外的に営業所建設が認められます。

 

建設予定地が既存宅地に認定されている

市街化調整区域の中でも、既存宅地と呼ばれる土地であれば建築工事が可能です。既存宅地については、次項で詳しく解説します。

 

トレーラーハウスを営業所として使用する

トレーラーハウスとは移動可能な家・建物のことですが、日本では車両と見なされます。

都市計画法の規制対象となるのはあくまでも「建築物」であって「車両」ではないため、トレーラーハウスを使えば、営業所設置が可能です。ただし、車両であることを明確に示すために、車検とナンバープレートの取り付けは必ず行ってください。

 

既存宅地とは

既存宅地とは、市街化調整区域にあっても、認定条件をすべて満たせば、許可なく建築工事をすることが許される土地のことです。その条件には、

  • 市街化調整区域に指定された時点で既に宅地利用されていたことについて、知事の確認を受けている
  • 市街化区域に隣接した地域にある
  • おおむね50戸以上の建物が立ち並ぶ地域にある

などがあります。

なお、2001年の都市計画法改正により既存宅地制度が廃止されたため、新たに認定を受けることはできません。ただし、過去に既存宅地の認定を受けていたことが市役所などで確認できれば、営業所を建てることは可能です。

 

プレハブであれば市街化調整区域でも建てられるのか

トレーラーハウスがOKなら、プレハブも良いのでは?と思うかもしれませんが、実際はNG。簡易的とはいえプレハブは建築物なので、例外が認められない限り、市街化調整区域に建てることはできません。

しかし、建築の制限を受けない土地であれば、プレハブを営業所として使用することは可能です。

 

プレハブが建てられる区域

市街化区域に該当するエリアには建築制限がないため、営業所用にプレハブを建てることができます。

ただし、床面積が10平方メートル以上の場合は、建築確認申請が必要です。建築確認申請は、一級建築士などに委託して行います。

 

まとめ

市街化調整区域の土地は、相場よりも価格が安いことが多いため、極力コストを抑えたい事業者にとっては魅力的です。

しかし、さまざまな制限や確認すべき事項があるため、他の区域区分の土地に営業所を建てるより時間や手間がかかったり、自分の力では手に負えなくなったりすることもあります。

そんな時は、諦めて別の区域の土地に目を向けるのも一つの方法。もしくは専門家の力を借りるのも良いでしょう。

運送業専門の行政書士法人シフトアップには、知識と経験豊富な行政書士が在籍していますので、困った時はお気軽にご相談ください。

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