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働き方改革

働き方改革には罰則規定あり!経営者が気をつけるべき5つの条項とは

kglo-kawai

運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

2019年4月より「働き方改革関連法案」の一部が施行され、安倍政権のもと掲げられてきた「働き方改革」が本格的に開始。

現在、多くの企業で改革に対する新たな取り組みが進められています。しかし、なかには働き方改革への取り組みについて、「何からはじめればいいのかわからない」といった声も聞こえてきます。

働き方改革では法改正により、法律によって義務化や罰則が設けられたものもあるため、結論としては罰則があるものから優先して取り組むのがいいと言えるでしょう。

このページではそんな働き方改革における罰則規定について、経営者が気をつけるべき5つの条項について詳しく解説していきます。

そもそも働き方改革とは

働き方改革とは、少子高齢化による労働人口の減少と労働生産性の向上に対応していくための法改正であり、「長時間労働の是正」や「多様な働き方の実現」を目的とした改革のことをいいます。

この働き方改革は、今後の日本社会の変化に対応していくためのとても重要な対策のひとつと言えます。

働き方改革の罰則規定がある5つの条項

罰則規定がある条項には、

時間外労働の上限規制
月60時間を越える残業の割増率の猶予廃止
フレックスタイム制の清算期間の上限延長
年次有給休暇の取得義務化
医師の面接指導の義務化

の5つがあります。以下でそれぞれの内容と罰則について解説していきます。

罰則規定のある条項1|時間外労働の上限規制

これまで36協定の上限規制は月45時間、年360時間の残業が決められていました。
しかし、特別な事情がある場合は特別条項を定めることで、上限規制を超えることが許されており、無制限に残業ができるため、長時間労働による過労死や自殺の増加など社会問題となっていました。

時間外労働の上限規制とは

こうした状況を改善するため、法改正によって特別条項に制限が設けられ、以下のような上限が定められました。

年720時間
複数月平均80時間を超えない(休日労働を含む)
月100時間未満(休日労働を含む)

なお、原則の月45時間、年360時間は変わらないままとなっています。

違反した場合の罰則規定

時間外労働の上限規制に違反した場合は、労働基準法違反として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

罰則規定のある条項2|月60時間を越える残業の割増率の猶予廃止

長時間労働是正のため、時間外労働に対しては1.25倍の割増賃金が支払われ、さらに月60時間を超える場合には1.5倍の割増賃金を支払うこととされています。
働き方改革ではこの残業の割増率に関してもメスが入りました。

月60時間を越える残業の割増率の猶予とは

先ほど述べたとおり、企業は労働者に対して月に60時間を超える残業に関しては1.5倍の割増賃金を支払わなければいけません。しかし、この制度は現在、大企業にのみ適用されており中小企業には適用が猶予されています。

そこで、働き方改革では、この猶予期間について2023年4月1日をもって終了することを決定し、以降、中小企業でも大企業と同じように1.5倍の割増率を適用することとなりました。

違反した場合の罰則規定

2023年4月1日以降、1.5倍の割増率による残業代を支払わなければ、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金科せられることとされています。

罰則規定のある条項3|フレックスタイム制の清算期間の上限延長

フレックスタイム制とは従業員が始業時間と就業時間を自ら決めることができる制度で、

個々のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができる
通勤ラッシュが避けられる
企業としては従業員の定着向上につながる

などのメリットがあるのが特徴です。

フレックスタイム制の清算期間の上限とは

フレックスタイム制では標準となる1日の労働時間が決められており、そのなかで「今日は短時間労働の日で、明日は長時間労働の日にしよう」など、自分の裁量で出社・退社時間を決めることができ、これまでは1か月のスパンで調整することとなっていました。

しかし、1か月のスパンでは繁忙期や閑散期の調整が難しいなどの問題があったため、法改正によって清算期間の上限が3か月に拡大されています。

これにより、標準労働時間の調整がしやすくなり、これまでよりも柔軟に対応することができるといったメリットが生まれやすくなるため、今後に向けた新たな人材確保や定着につながることが期待されています。

違反した場合の罰則規定

法改正では、1か月を超える清算期間を設定する場合には労使協定を締結し、届出をすることが義務付けられました。そして、この義務に違反した場合、企業には30万円以下の罰金が科せられます。

罰則規定のある条項4|年次有給休暇の取得義務化

日本における有給取得率はわずか50%と非常に低く、その理由には

仕事が多忙である
職場が有給を取りにくい雰囲気である
迷惑をかけるためあえて取らない

などが挙げられます。

そもそも、有給は労働者の権利なので堂々と取得するべきなのですが、上記のような理由から取得率はなかなか向上していかないのが現状です。

そこで、働き方改革ではこうした状況や長時間労働の是正のためにも労働者が有給を取りやすくするための対策として有給休暇の取得を義務化しました。

年次有給休暇の取得義務化とは

有給の取得は労働者から会社に申し出て取得するものですが、先述したように様々な理由から労働者側からはなかなか申し出にくいのが本音です。

そのため、法改正では、労働者からではなく会社側から労働者に対して「年に最低5日の有給休暇を取らせることを義務化」し、これまでよりも有給を取得しやすくするための対策を講じました。

違反した場合の罰則規定

企業は今後、年次有給休暇を取得させる義務が生じ、これに違反した場合、30万円以下の罰金が科せられます。

罰則規定のある条項5|医師の面接指導の義務化

「長時間労働をしている人は必ず医師に診てもらいましょう」ということが法律で義務化され、2019年4月から施行されました。

医師の面接指導の義務化とは

医師の面接指導は法改正以前からありましたが、これまでは長時間労働をしている社員からの申し出がなければ実施されませんでした。

しかし法改正によって、今後は会社側から長時間労働に該当する社員に対して医師の面接指導を実施しなければいけません。同時に、該当する社員も面接を受けなければならないこととなりました。

長時間労働に該当する社員に関しては以下の2つの規定があります。

新たな技術、商品または役務の研究開発に関わる業務に従事する労働者で、時間外、休日労働が月あたり100時間を超える者
高度プロフェッショナル制度の対象者で、健康管理時間が週40時間を超えた場合、その超えた時間が月あたり100時間を超える者

違反した場合の罰則規定

医師の面接指導が義務化されたことにより、従わなかった場合には50万円以下の罰金が科せられるようになりました。

まとめ

以上が働き方改革における罰則規定について、経営者が気をつけるべき5つの条項の内容と罰則になります。

働き方改革によって今後はどの企業においても大きな変化が必要となってきます。そのための取り組みとしては今回紹介した罰則規定のある条項から優先的に進めていく必要があります。

これらの対策に向けて理解を深めたうえでしっかりと対策をしていきましょう。

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運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

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