2019年4月に働き方改革関連法案の一部施行により本格的に開始された働き方改革。
施行からまだ1年ほどですが、これまで多くの企業で働き方改革の実現に向けた取り組みが行われたことや、各メディアでも頻繁に取り上げられたこともあり、すっかり定着したイメージがあります。
ただ、そんな働き方改革に関して、なんとなくは理解していても
「そもそも何のために必要な改革なの?」
「働き方改革でメリットはあるの?反対にデメリットはないの?」
といったような疑問を持っている方も少なくはありません。
そこで、このページでは働き方改革に関する導入の背景やメリットとデメリット
など、皆さんが疑問に感じている点について詳しく解説していきます。
働き方改革導入の3つの背景
働き方改革が導入された背景には主に、
1.人口の減少
2.テクノロジーの進化
3.人生100年時代の到来
の3つの事情が挙げられます。以下でそれぞれについて詳しく見ていきましょう。
背景1|日本の人口が減少し続ける
日本の人口は2004年の1億2,784万人をピークに急激な減少を続けており、100年後には5000万人を切るとも言われています。
その一方で高齢化率は上昇し、現在の28.4%(2019年9月の推計)から2030年には30%を超え、2050年には40%になると予想されています。
そうなると当然、日本の労働人口は減少していくため労働生産性の低下から経済へのダメージが大きくなるのは容易に想像がつくかと思います。
そこで、こうした状況に対処していくためには、女性や若年者、高齢者といった労働者を積極的に増やしていく必要があり、働き方改革で掲げられた「一億総活躍社会の実現」に向けた多様な働き方ができる環境を早い段階から作っていかなければならないため、働き方改革のような施策を講じる必要性が出てきたのです。
背景2|テクノロジーが進化している
RPAやAIなど、近年テクノロジーはものすごい速さで進化を遂げています。将来の日本が抱える労働人口の減少や労働生産性の向上といった問題を解決していくためには、これらの技術を積極的に取り入れていくことが欠かせません。
そのため、今後は
RPAやAIの活用による単純業務の自動化
など、テクノロジーを活用した業務の効率化と生産性の向上に向けた環境を社会全体で作っていくことが重要となります。
背景3|人生100年時代の到来
人生100年時代とは、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)で提唱された言葉です。
現在は医療の発展に伴い平均寿命は年々高くなっており、この本ではそうした現状を踏まえたうえで、100年間生きることを前提とした人生設計の必要性についての内容が書かれています。
そして、この人生100年時代という言葉は様々なメディアで取り上げられたことで日本においても浸透。将来的には経済社会を持続していくための社会保障制度の見直しも必要となり、高齢になってからも現役で働き続けるという時代に変化していくことが予想されます。
そのため、今後は
「教育・仕事・老後」の3段階の人生設計からの脱却
長く活躍するための知識やスキルの学び直しや転職
などの100年時代への対策に向けて行動していくことが重要となり、個人や企業だけでなく、国全体での大きな見直しが必要とされているのです。
働き方改革のメリット(3つの視点)
ここからは、働き方改革のメリットとデメリットについて解説していきます。まずはメリットについて、3つの視点から見ていきましょう。
政府のメリット
政府のメリットとしては
年金の支払いが減る
といったものが挙げられます。
「税収が確保できる」については、単純に働き手が増えればそれだけ税金を多く集められるため、社会保障等を維持していくうえでのメリットとなり、「年金の支払いが減る」という点に関しても、財源が厳しい中で65歳以上の労働者が増えていけば支払いが抑えられるため、メリットになると言えるでしょう。
会社のメリット
会社のメリットには
経費の削減
社会的評価が得られる
などが挙げられます。
働き方改革に取り組むことで長時間労働が是正されれば、従業員は限られた時間の中で仕事を終わらせなければならないため、次第に集中力もアップしていき、結果として生産性の向上へとつながることが期待できるでしょう。
さらに余分な残業代を支払う必要がなくなるため、経費削減にも期待ができます。
また、働き方改革に熱心であり柔軟な働き方を積極的に取り入れている会社というのは、求職者にとっても魅力的に映り、良いアピールにもつながるため、社会的評価を得やすいといったメリットもあります。
従業員のメリット
従業員のメリットに関しては以下のとおりです。
プライベートが充実する
多様な働き方ができる
働き方改革では、「時間外労働の上限規制」の導入や「有給休暇の取得義務化」など、長時間労働の是正に向けた動きが本格的に進められています。
そのため労働者にとっては長時間労働が改善されることで健康的で安全な働き方ができるほか、家族との時間や趣味の時間といった自由な時間が増えるため、これまでよりもプライベートが充実するといったメリットがあります。
また、多様な働き方ができる環境が作られることで、子育てや介護など家庭と仕事の両立が難しいことから、これまで働きたくても働けなかったといった人たちの活躍の場が増えていくとことにも期待ができます。
働き方改革のデメリット(3つの視点)
続いては、働き方改革のデメリットに関して3つの視点から見ていきましょう。
政府のデメリット
政府のデメリットについては、会社が働き方改革を進めていくうえで必要となる助成金の負担や、今後に起こりうる問題への対策などが挙げられます。
今後の問題としては、労働時間の短縮による管理職の負担増加や、残業禁止によって仕事を自宅に持ち帰るといったサービス残業の増加などの問題が多くの会社で起こることが予想されます。
そのため、このような新たな問題が増えていくたびに政府としては新たな対策を講じる必要が出てくるでしょう。
会社のデメリット
会社のデメリットには
人件費の増加
といったものがあります。
労働時間の短縮によって従業員の生産性が高まるのが理想ですが、うまくいかなかった場合には業務がスケジュール通りに進まず完了しない恐れがあります。
そうなると、いくら受注したところで多くの仕事が回せなくなるため会社の利益にも大きな影響を及ぼしかねません。
また、働き方改革では「同一労働同一賃金」によってこれまでの非正規雇用の待遇の見直しがされたため(中小企業は2021年4月から適用)、会社にとっては人件費の増加による負担が大きくなります。
従業員のデメリット
従業員のデメリットには
給料の減少
などが考えられます。
労働時間が短くなることで、従業員には仕事の効率化と、生産性を高めていくことが求められます。そのため、徹底的な無駄の排除とスケジュールの管理に追われるなど、これまでよりも負担が大きくなることが予想されます。
残業禁止となった場合など、仕事が終わらなければ自宅に持ち帰ることになり、結果としてサービス残業になるといった恐れもあるでしょう。
また、給料に関しても労働時間の減少によってこれまでよりも得られる給料が減少するため、残業代を目当てにしていた人にとっては収入面での影響が大きくなるといったデメリットがあります。
まとめ
働き方改革は、少子高齢化が進むなかで「多様な働き方の実現」による労働人口の増加と労働生産性の向上のために欠かせない重要な改革です。
政府・会社・従業員とそれぞれの立場で様々なメリット・デメリットがありますが、それぞれがそれぞれの立場で働き方改革の趣旨を理解しながら取り組んでいくことが、今後に向けて非常に大切になってくるでしょう。