賃金

運送業のはじめ方

トラックドライバー 労働基準法 就業規則

トラック運転手の給料のことがよくわかる記事

kglo-kawai

運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

一般的にトラック運転手は長時間労働や賃金が変動しやすいというイメージがあるようです。実際のところ、トラック運転手の給料にはどのような実態があり、法律上はどのような規定があるのでしょうか。

そこで、この記事ではトラック運転手の給料の実態と問題点、給料に関する労働基準法の規定などについて解説していきます。トラック運送業に興味のある方、あるいはドライバーへ転職を考えているという方はご参考にしていただければ幸いです。

 

 

トラック運転手の給料の実態と問題点

トラック運輸産業の賃金支給総額は、2017年6月の勤労統計によれば、310,133円であり、全産業の給与支給総額である357,774円に比べて約15%低い結果となっています。

時間当たりの賃金は、トラック運輸産業が1,515円。全産業の時間当たり賃金2,129円に比べて約30%低い値となっています。

月労働時間の平均は、トラック運輸産業が204.6時間(うち超過時間は36.7時間)、全産業では168.0時間(超過時間16.6時間)です。

つまりトラック運輸産業は、ほかの産業より労働時間が長いのにもかかわらず、賃金は低い傾向にあるわけです。

また同月の労働条件実態調査によれば、大型車運転職(男子労働者)の賃金内訳は、

  • 固定給45.4%
  • 仕事給(歩合給など)30.1%
  • 所定外24.5%

となっており、事務職がそれぞれ77.0%、6.3%、16.7%に比べると、変動給の比率が非常に高いことがわかります。

 

 

給料に関する労働基準法の規定を知っておこう

従業員給料に関して労働基準法ではどのように規定されているのでしょうか。ここでは、給料の支払いや割増賃金、最低賃金などについて見ていきます。

 

 

給料の支払い(労働基準法第24条)

労働基準法では賃金支払について以下の5つの原則が定められています。

  1. 現物給与の禁止
  2. 直接払い
  3. 全額払い
  4. 毎月1回以上
  5. 一定期日払い

この原則に違反した場合、労働基準監督署の調査を受けたり、また労働基準法第120条により、使用者は30万円以下の罰金を課せられたりします。

具体的には、労働基準法第24条で賃金について以下のように規定されています。

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

2 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。”

 

 

割増賃金(労働基準法第37条)

労働基準法では、時間外労働や法定休日労働、深夜労働などより負担の重い労働については、より多くの賃金を払わなければならないことが定められています。

割増賃金率に関しては、法定労働時間を超える残業は1.25倍、1か月60時間を超える残業は1.5倍、法定休日労働は1.35倍、深夜労働は0.25倍、深夜に及ぶ残業は1.5倍、休日の深夜労働は1.6倍となっています。

具体的には、労働基準法第37条で以下のように規定されています。

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。”

紙幣

 

最低賃金(労働基準法第28条)

労働基準法第28条は、最低賃金については、最低賃金法によると規定しています。最低賃金法は労働者の生活を安定させ、労働力の質的向上を図るために1959年に制定されました。

最低賃金は、まず研究者からなる公益委員、労働者側委員、使用者側委員によって構成される中央最低賃金審議会の審議によって、引き上げの目安が決定されます。

さらに同様の委員によって構成される地方最低賃金審議会によって、各地域の実情を踏まえた審議、答申がなされ、最終的に各都道府県労働局長が決定します。

 

 

地域別最低賃金と特定最低賃金

最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があります。地域別最低賃金は、職種にかかわらず、どの労働者にも平等に該当するものです。一方、特定最低賃金は特定の職種に対して定められたものです。

平成30年度地域別最低賃金においては、東京が985円と最も高く、鹿児島が761円と最も低くなっており、224円もの格差があります。

 

 

休業手当(労働基準法第26条)

労働基準法第26条は、以下のように休業手当について規定しています。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。”

何が「使用者の責に帰すべき事由」に当たるかが問題となりますが、不可抗力以外のことは、それに該当します。例えば、会社が資金不足で営業できなかったり、監督官庁の勧告による営業停止などが使用者の責めに帰すべき事由にあたります。反対に天災や計画停電による休業などは該当しません。

 

 

トラック運転手の給料で注意すべき点

トラック運転手の給料に関して重要なことは未払い賃金をなくすことです。そのために、従来の賃金規定に時間外労働の割増賃金を合理的に組み込んでいく必要があります。

同時に就業規則についても合理的なものとし、時間管理を適切に行えるようにしなければいけません。

 

 

まとめ

トラック運転手の長時間労働、人手不足が問題となるなかで、給料体系に関しては、ますます合理的なものであることが求められています。

労働時間が長く、きつい仕事のわりに給料が安いというイメージを払拭し、いかに人材確保していくかが今後のトラック運送会社の課題と言えるでしょう。

  • この記事を書いた人

kglo-kawai

運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

-トラックドライバー, 労働基準法, 就業規則
-,