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働き方改革

働き方改革とは?改革の理由と8つのポイントを5分で理解

kglo-kawai

運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

「働き方改革」は、近年メディアでも頻繁に取り上げられるなど、耳にする機会が非常に多くなった言葉の一つです。

2019年4月1日に働き方改革関連法案の一部が施行されたことにより、日本中の各企業がこれまでの働き方に対する取り組みを見直すための取り組みを行うようになるなど、いま大きな転換期を迎えています。

しかし、その一方で

「働き方改革って結局のところ何なの?」
「そもそもどういう目的があって始まったの?」

といったように、言葉は知っていても内容については今ひとつよく理解ができていないという方も多くいるのが現状です。そこでこのページでは、

  • 働き方改革の必要性
  • 働き方改革の基本知識
  • 押さえるべきポイント

など、今まで曖昧だった「働き方改革」の具体的な内容についてできる限りわかりやすく、かつ丁寧に解説していきます。

 

働き方改革はなぜ必要なのか?

働き方改革の具体的な内容について説明する前にまず、「そもそもなぜこのような改革が必要となったのか?」という、制度ができた背景と目的について知ることが大切です。

制度ができた背景と目的には主に

一億総活躍社会の実現
人口の減少

の2つが挙げられ、それぞれの内容については以下のとおりです。

 

目的は日本の一億総活躍社会の実現

「働き方改革の目的=一億総活躍社会の実現」です。この一億総活躍社会には、「老若男女問わず、みんなが活躍できる社会にしていきましょう」という意味合いが込められています。

もう少し説明しますと、現在の日本は女性の社会進出や少子高齢化など、以前と比べて社会状況が大きく変化しており、それに伴って個々のライフスタイルも多様化しています。

これらの状況に対応していくためには、一人ひとりの個性と多様性を尊重し、家庭や地域、職場においてそれぞれの希望がかなえられ、かつ能力を発揮し、生きがいを感じることができる社会を実現していくことが重要となっています。

そのためにも「一億総活躍社会」の将来的な実現に向けた早急な取り組みと対策が必要であり、働き方改革を推進していくための目的として掲げられたというわけです。

 

このままだと日本人口は2105年に4500万人まで減少

日本の高齢化率は世界でもトップクラスであり、さらに少子化問題も相まって総人口は年々凄まじい勢いで減少しています。

このままの勢いが続けば、今から約80年後の2105年には現在の総人口1億2593万人(2020年6月時点)から1/3規模の約4500万人まで減少すると言われています。

そうなると当然、労働人口も減少するため、日本の労働生産性は大きく落ち込むなど経済への影響は避けられません。

実際に、現在においても人口減少の影響はすでに起こっており、どの業界においても人手不足が深刻なため、過度な長時間労働や過労死といった問題が次々と起こっている状況で一刻も早い対策が必要となっています。
こうした背景も働き方改革が推進された大きな要因となっているのです。

 

働き方改革とは?基本的な考え方をおさえよう

「働き方改革」とは、先ほど述べた「一億総活躍社会の実現」と「人口減少」への対策に向けた取り組みの事です。少子高齢化に伴う労働人口の減少と、働き手のニーズの多様化に対応していくためには、生産性の向上と就業機会の拡大のほか、意欲や能力が発揮できやりがいを持って働ける環境をつくることが必要です。

働き方改革には、こうした働く人々がそれぞれの置かれた環境や事情に応じて柔軟な働き方を自ら選択できるようにすることを目指していこということが基本的な考え方としてあります。

 

働き方改革の8つのポイントとは

「働き方改革」の実現には、長時間労働を改善し、ワークライフバランスと多様な働き方ができる環境をつくることが重要です。そのため、働き方改革では以下の8つのポイントを中心とした取り組みが行われています。

 

ポイント1|時間外労働に上限規制

残業時間の上限は原則として月45時間、年間で360時間となっています。しかし、働き方改革による法改正以前は、36協定(サブロク協定と読みます)を締結することでこの上限に関係なく無制限に残業をさせることができていました。

そのため、長時間労働の常態化や過労死の増加など様々な問題が発生するようになり、労働者の労働環境はどんどん悪化していきました。そのため、法改正ではこれらの問題を解消する手段として

年720時間以内
複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
月100時間未満(休日労働を含む)

を超えることができない罰則付きの上限規制を設けました。

 

ポイント2|年次有給休暇の確実な取得

日本では昔から、上司や部下に気を使いなかなか有給を取得しづらいといった悪い風潮があるため有給取得率が異常に低く、その数字はわずか50%に留まるなど、世界の主要国のなかでも最下位となっています。

そのため、働き方改革では労働者の確実な有給休暇の取得を目指すため、年5日の有給休暇の取得を義務付け、違反した場合には30万円以下の罰金を課すという罰則を設けました。

 

ポイント3|中小企業の月60時間超の残業には割増賃金率も引き上げる

これまで大企業にのみ適用(2020年~)されてきた割増賃金の引き上げが2023年4月より中小企業にも適用されることになりました。割増賃金率はこれまでの25%から、60時間を超える分に関しては50%に引き上げられます。

 

ポイント4|フレックスタイム制の拡充

2019年4月より導入された新フレックスタイム制では労働時間の調整が可能な期間(清算期間)がこれまでの1か月から3か月に延長されました。

これにより、今までに比べ繁忙期と閑散期の労働時間の通算がしやすくなるといったメリットが生じ、子育て・介護をしながらでも働きやすい環境が整えられるため労働人口の増加が期待できます。

 

ポイント5|高度プロフェッショナル制度を新設

一定の年収以上で特定の高度専門職のみが対象となる制度で、働いた時間に対して報酬を支払うのではなく、成果や業績に対して報酬を支払う制度のことです。

企業には労働生産性向上、労働者には出社時間や休暇を自由に決められるといったメリットがあり、労働者は子育てや介護との両立が可能となりワークライフバランスの実現が可能となります。

 

ポイント6|産業医・産業保険機能の強化

これまで、事業者は産業医から勧告を受けても尊重義務に留まっていました。

しかし今回の法改正によって事業者は、勧告内容を事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告することが義務付けられ、衛生委員会での実効性のある健康確保の対策に役立てることとなりました。

 

ポイント7|勤務間インターバル制度の導入促進

勤務間インターバルとは前日の勤務終了時間から翌日の勤務開始時間まで一定の休息時間を確保することで、長時間労働を防止するための制度として2019年4月より導入されました。

ただし、この制度は法定義務ではなく、あくまでも企業に対する努力義務となっています。努力義務とは簡単に言うと、「できるだけ導入するように努力してね」というお願いに近いようなもので、法的効力がないため、導入しなくても罰則が与えられることはありません。

そのため、この制度は現時点では導入するかどうかは企業の判断に委ねられているという状況です。

 

ポイント8|正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差の禁止

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の場合、内容や責任の程度が同じであっても待遇に大きな差が生じていました。今回の法改正では、こうした待遇差に関して非正規雇用労働者から待遇差の内容と理由の説明を受ける権利が与えられ、企業は説明を求められた場合に説明をすることが義務付けられました。

これは「同一労働同一賃金」と呼ばれる制度で、大企業では2020年4月から、中小企業では2021年4月から適用が開始されます。

 

まとめ

働き方改革の本格的な取り組みはまだ始まったばかりで、「一億総活躍社会の実現」には課題も多く、今後に向けた改善には各企業の努力と、労働者の協力が必要となるでしょう。

今まで曖昧だった働き方改革のことが、この記事で少しでも理解していただけたなら幸いです。

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kglo-kawai

運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

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