トラック運送業において長時間労働は居眠り運転や交通事故、過労死といった労災を引き起こす可能性も高く、休憩・休息は非常に重要となってきます。
2019年4月に改正労働基準法が施行され、労働環境改善のための施策が進行しているなか、トラック運送業はこれまで以上に休息・休憩について法令を意識する必要があると言えるでしょう。
そこで、この記事では休息・休憩についての理解を深めていただくとともに、トラック運転手に休憩・休息を与えるときに注意すべき点などについてお伝えします。
トラック運転手に関する拘束時間・休息期間・分割休息とは?
労働基準法では、休憩時間について定めていますが、休息期間についての規定はありません。
一方、労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準=改善基準告示」は、自動車運転者の労働条件の基準を示し、一般労働者とは異なる労働時間や休息期間などについて定めています。
以下では、改善基準告示で定める拘束時間、休息期間、分割休息について見ていきましょう。
①トラック運転手の拘束時間とは?
拘束時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間であり、労働時間と休憩時間を合わせた時間となります。労働していない時間は休憩時間に当たり、休憩時間は労働時間が6時間から8時間の場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上与えることが基準とされています。
連続運転時間は4時間が限度であり、4時間に運転したら、最低30分以上の休憩が必要とされています。連続して30分の休憩が取れない場合は、少なくとも1回10分以上の休憩を分割して取れば問題ありません。
②取らせての休息期間とは?
休息期間とは、勤務と次の勤務の間の時間で、労働者が会社の支配下に置かれることなく全く自由に使える時間のことです。1日の休息期間は原則として、8時間以上の連続した時間が必要となります。
つまり1日でみれば、拘束時間は16時間以内、休息期間は8時間以上となるわけです。
ただし、拘束時間は単純に16時間以内にすれば良いというわけではありません。
15時間勤務は週2回までと定められているため、休息期間が8時間しか取れない日が週3回以上あると、法令違反となってしまうので注意しましょう。
③分割休息
業務の都合上、連続8時間以上の休息期間を設けることが難しい場合は、特例として休息期間を分割することが認められています。
分割休息の詳細は後程ご説明します。
分割休息が定められた背景
かねてよりトラック運転手の長時間労働は問題となっていました。一日の拘束時間を16時間以内とする通達が出ていましたが、なかなか守られず、労働時間の改善基準の法制化が進められました。
1989年には自動車運転者の労働時間等の改善のための基準が労働大臣告示として出され、その後も改正が重ねられています。
トラック運転手が分割休息を取る際に注意する5つのポイント
ここからは、トラック運転手が分割休息を取る際、気を付けるポイントとしては、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
ポイント①|分割休息の要件を理解しておく
休息期間の分割が認められるためには、特定の要件を満たさなくてはなりません。その要件としては、以下の2点が挙げられます。
分割休息の回数
一つ目の要件は、分割休息の回数は一定期間(原則2~4週間)の全勤務回数の2分の1を限度とすることです。
分割休息の時間の長さ
二つ目の要は、1回当たり4時間以上、合計10時間以上の休息を与えることです。
ポイント②|細切れの4時間は休憩にしかならないので注意
1回の休息期間の長さが4時間に満たない場合は、改善基準を満たさないため、単なる休憩となり、拘束時間に含まれることとなってしまいます。
積み下ろしを急ぐあまり、しっかり休息を取らない運転者もいますが、法令違反とならないようしっかり指導教育してください。
ポイント③|休息期間と休憩時間は違う
労働時間以外が休憩時間に当たりますが、基本的に荷待ち時間は休憩時間には含まれません。実際に作業をする時間も荷待ち時間も労働時間となるので注意してください。
ただし荷物の発着時刻が指定されている場合の荷待ち時間に関しては、その時間中に休憩を1時間以上設けている場合で、労働者が自由に時間を利用できるならば、休憩時間とみなすという行政通達もなされています。
一方、休息は完全に仕事から離れている時間です。したがって会社側は、運転者に休息を取らせているときは仕事関係の電話やメールなどをしないことが望ましいとされます。
ポイント⑤特定の条件を満たせば特例もある
1台のトラックに2人以上の運転手が乗務するツーマン運行の場合には、特例として拘束時間は最大20時間までの延長、休息期間は4時間まで短縮が認められます。ただし、トラック内にベッドなど身体を伸ばして休める設備を備えていることが条件となります。
まとめ
トラック運転手の分割休息について解説してきました。働き方改革が進められ、安全運行に関しても再検討されているなかで、休息についても見直しの機運が高まっています。
分割休息についてもますます合理的な対処が求められるでしょう。