弊社シフトアップは運送業許可申請をご依頼頂くから「個人で運送業許可を取れますか?」という質問をよく受けますが、もちろん、個人で運送業の許可を取ることは可能です。
この記事では、個人事業主で運送業許可を取得したい方のための条件や注意事項について優しく専門家が解説いたします。
※個人=1人でも運送業許可が取れるということではないのでご注意ください。
運送業許可の心構えについて知りたい方はこちらの記事もご確認ください。
運送業許可取得に必要な条件を満たしていれば個人でも大丈夫
個人事業主で運送業許可を取得するには、貨物自動車運送事業法という法律などで定められた一定の条件をクリアしなければいけません。その条件は以下のとおりです。
資金が確保できていること|これが一番重要です!
個人で運送業許可を取る場合でも、運送業を開業してから2か月間の人件費等、6か月間の事務所・駐車場の賃料、1年分の自動車税や任意保険の保険料などの合計額以上の開業資金が確保できていなければなりません。
開業資金の合計を運送業許可申請では「事業開始に必用な資金」と言います。この事業開始に必用な資金の額以上の預貯金が個人事業主であるあなたの個人口座にあるということを銀行や郵便局が発行する「残高証明書」で証明し、運送業許可申請を行います。
運送業を始めるのに十分な資金があることを残高証明書で証明できなければ、他の運送業許可取得の条件がすべて揃っていても申請は受け付けてもらえません。したがって、事業開始に必用な資金の確保が一番重要です。
なお、個人事業主で運送業許可申請をする場合は、添付資料として「資産目録」という書類が必用になります。
事務所・休憩室と駐車場が確保できていること
運送業に使用する事務所・休憩室と駐車場は、賃貸でも自己所有でも構いませんが、
- 賃貸の場合は個人事業主本人が借りていること。
- 自己所有の場合は個人事業主本人が所有者となっていること。
が必要です。
賃貸の場合は、賃貸借契約書、自己所有の場合は、土地や建物の登記簿謄本が運送業許可申請時に必要な書類となります。
事務所・休憩室選びのポイント
事務所・休憩室は、自宅やマンションの一室でも構いませんが、法令で事務所・休憩室を建てても良いとされている場所にある建物でなければなりません。
事務所・休憩室が建てられる場所かどうかは、「都市計画法」という法律で決められています。都市計画法では、建物を建てて良い場所と、なるべく建てないでくださいねという場所を分けています。
建物を建てて良い場所を「市街化区域」と言い、基本的に建ててはいけない場所を「市街化調整区域」と言います。
さらに、都市計画法では市街化区域を「用途地域」と呼ばれる、区分を作って事務所などが建てられる場所と、そうでない場所を決めています。
事務所を建てられない用途地域は以下のとおりです。
- 第1種低層住居専用地域
- 第2種低層住居専用地域
- 第1種中高層住居専用地域
- 第2種中高層住居専用地域(2階以下の建物であれば可)
※いずれも例外あり。
事務所・休憩室選びで注意するのはココ
不動産仲介業者でも、用途地域の区分について良く理解していることが少ないため、事務所・休憩室の候補地が見つかったら、必ず運送業許可を専門としている行政書士事務所に運送業許可申請できる場所に建っている建物かどうかを確認するようにしましょう。
補足
上記の条件に加えて、建築基準法や農地法など、建物に関係する法令すべてをクリアしないと個人運送業に使用する事務所・休憩室の条件を満たしたことにはなりません。
例えば、建物が建っている土地の登記上の地目が「田畑などの農地」である場合は、農地転用をしなければ条件をクリアできません。
※農地転用とは農地である土地を、建物が建築できる地目に変えることです。
【関連記事】運送業の駐車場(車庫)を選ぶときの4つのポイント教えます
駐車場選びのポイント
駐車場は、公園や保育園・小学校など児童の往来の多い場所を駐車場にしない方が良いとされています。
また、駐車場出入口前の車道幅が、使用するトラックの最大横幅を2倍した値に50センチを加えた幅以上必用なければなりません。
250センチ×2+50センチ=550センチ(5.5メートル)→ 駐車場出入口前の車道幅は5.5メートル以上必要
駐車場選びでもう一つ大切なことは、駐車場の広さは運送業に使用する事業用自動車=トラックすべてを収容することができる大きさが必要でなことです。
特に三角形の形をした駐車場などは、角の方にトラックを駐車することができません。デッドスペースとなる部分は駐車場の広さに入れることはできないため、余裕を持った広さの場所を選んでください。
必用な人材を確保できていること
運送業許可申請で必ず必用な人材は、
- ドライバー5人
- 運行管理者1人以上
- 運行管理補助者1人以上
- 整備管理者1人以上
- 整備管理補助者1人以上
となります。運行管理者はドライバーを兼任することができないため、最低でも6人の人材を「確保」しなければいけません。
※運行管理補助者、整備管理者、整備管理補助者はドライバーを兼任できます。
たまに運行管理者や整備管理者は名義を借りれば良いと思っている方がいますが、名義借りはできませんのでご注意を。
補足
「確保」とは、運送業許可申請時に雇用関係にあるかどうかを問わず、許可取得後にあなたの従業員となってくれることが決まっている人であれば良いとされています。
従業員を社会保険や労働保険に加入させること
個人事業主本人は社会保険でなく、「国民健康保険」と「国民年金」に加入していれば問題ありません。そして、雇用保険も労災保険も加入する必要はありません。ただし、従業員を5人以上雇う場合は、従業員全員を社会保険に加入させることが必須となります。
※健康保険と厚生年金保険を併せて「社会保険」言います。
また、雇用保険や労災保険は従業員の人数に関係なく従業員全員を加入させないといけません。
※雇用保険と労災保険を併せて「労働保険」と言います。
ここで、疑問に思うことは事業主の奥様や子供など身内を従業員とする場合、社会保険・労働保険に加入させないといけないのかということです。
その回答は少々複雑なので、社会保険と雇用保険、労災保険に分けて以下でわかりやすくご説明します。
社会保険の加入|事業主の身内を従業員とするケース
個人事業主の身内である配偶者(配偶者とは夫から見た妻。妻から見た夫のことです)や子供は、扶養範囲内の給料を支払うなら社会保険への加入は必用ありません。
ただし、社会保険に加入しないといけないケースもあります。例えば、
のように他の従業員と同様の労働条件で働く場合は、たとえ事業主の身内であろうと社会保険に加入しないといけません。
社会保険の加入|事業主の身内以外を従業員とするケース
身内以外の従業員の場合は以下のいずれか1つに当てはまれば社会保険に加入しないといけません。
- 正社員や2ヶ月超えの雇用契約を交わしたフルタイム労働者
- 2ヶ月超えの雇用契約で1週間の労働時間と1ヶ月の労働時間の両方が正社員の4分の3以上の短時間労働者
上記1または2に該当する場合でも、75歳以上の者は社会保険に加入する必要はありません。
雇用保険の加入|個人事業主の身内を従業員とするケース
個人事業主の身内は雇用保険に加入する必要はありません。
雇用保険の加入|事業主の身内以外を従業員とするケース
従業員を雇用保険に加入させる必要はありません。ただし、従業員と同様の働き方で、なおかつ事業主の指揮命令の下で雇用されている場合は雇用保険に加入しなければいけません。
労災保険の加入|事業主の身内を従業員とするケース
事業主の身内は労災保険に加入する必要はありません。ただし、事業主本人が労災に加入する場合は、事業主の身内である従業員も労災に加入させないといけません。
※個人事業主本人が労災保険に加入することを「特別加入」と言います。
労災保険の加入について|事業主の身内以外を従業員とするケース
従業員を労災保険に加入させる必用はありません。ただし、事業主本人が労災保険に加入する場合は、事業主の身内である従業員も労災に加入させないといけません。
また、雇用保険と同じく従業員と同様の働き方で、なおかつ事業主の指揮命令の下で雇用されている場合も労災保険への加入が必要となります。
最低5台以上のトラックを確保できていること
運送業に使用する事業用自動車=トラックは最低でも5台必用です。5台の中にはハイエースなどの小型車を含んでも構いませんが、軽自動車を含むことはできません。
トラックは運送業許可申請の受付をする前に購入していなくても、購入が決まっていれば良いとされています。
ただし、購入が決まっているとして申請をするには購入予定車両の「売買契約書」や「注文書」などを提出する必要があります。
トラック購入時の注意ポイント
運送業許可申請のさいに申請者となる「個人事業主」が買主となる売買契約等の提出が必用です。
事業主以外が買主となる売買契約書では、運送業に使用するトラックを確保したことにはなりませんので注意してください。
個人事業主本人が法令試験に合格すること
運送業許可申請の受付が終わったあとは、運輸局で行われる「法令試験」に合格しなければなりません。
法令試験は、運送業を運営するための安全運行の知識などがあるかを判断するために行われます。
法人で申請する場合は、社長でなくても法人の役員のうち、どなたか一人が受験できます。対して、個人事業主として運送業許可申請をする場合は、個人事業主本人しか法令試験を受験できません。
まとめ
個人事業主で運送業許可を取得するには、事業に必要な資金や駐車場と事務所・休憩室、従業員、トラックの確保などが必要です。
許可取得の条件は、法人の場合とほとんど変わりはありませんが、法人と個人では申請時に添付する書類が変わってきます。ですので、行政書士に依頼する場合は、運送業許可のことを熟知した事務所へご依頼いただくことをおすすめします。
個人事業主か法人のどちらで運送業許可を取得するか迷っている。または、個人で許可が取れるか確認したいという方は、「運送業許可専門の行政書士法人シフトアップ」へお気軽にご相談ください。