36協定

労働基準法

36協定ってなに?専門家が疑問をスッキリ解消

kglo-kawai

運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

36協定(「サブロクキョウテイ」と読みます)とは労働基準法第36条に基づく、法定労働時間を超えて労働させるために必要な労使協定のことを言います。

2018年には労働基準法が10年ぶりに改正され、2019年4月より施行されました。働き方改革が進んでいますが、違法な労働で問題となる事業所も少なくありません。

たとえば、島根労働局は2018年度の調査結果として、県内237事業所で労働基準関連法令への違反があり、是正勧告したことを発表しています。その237事業所のうち、28事業所が36協定を結んでおらず、92事業所が36協定を結んでいるものの、上限を超えて労働させていました。

運送業においては、従業員の長時間労働は居眠り運転や交通事故、過労死などの労働災害を引き起こしかねません。労働基準法をしっかり踏まえ、36協定について十分に理解し労働管理を行う必要があります。

 

知らないと損するトラック運送の36協定とは

2018年7月、労働基準法の改正を含む「働き方改革関連法」が成立しました。改正労働基準法は2019年4月1日に施行されています。まずは36協定の呼び名のもとになる、労働基準法第36条について確認していきましょう。

 

労働基準法第36条の規定

労働基準法第32条から同条の五では、1週間40時間、1日を8時間を超えて労働させてはならないとするなど労働時間の基準が示されており、第40条では労働時間及び休憩の特例を規定しています。

つまり、第36条は労働者と会社の間で協定を結んだ場合、労働時間の基準を超える労働をさせることができる規定となっているのです。

詳細は以下のように労働基準法第36条で定められています。
※法律の条文が苦手な方は読み飛ばしてください。

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

36協定はどこに提出するのか

時間外労働、休日労働に関して協定した36協定書は、所轄=営業所を管轄する労働基準監督署長に提出する必要があります。

所轄労働基準監督署は、全国の各市や町に設置されており、それぞれ管轄する地域が定められています。管轄地域に関しては、厚生労働省のウェブページで確認することができます。

愛知県の所轄区域と労働基準監督署の所在地はこちら
https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/kantoku/kantoku.html

 

協定を結ぶ時のポイント

トラック運送業者が36協定を結ぶときの注意ポイント

トラック運送業者が36協定を結ぶ際においてポイントとなる

  1. 残業時間の限度
  2. 拘束時間の限度

について整理していきます。

 

ポイント1|残業時間の限度

残業の限度時間は原則、月45時間、年360時間、特別な事情が生じた場合は、月100時間未満、6か月までの平均で月80時間とされています。

ただし残業時間や休日労働は、必要最低限に止まるべきであることを意識しなければなりません。

また36協定の範囲内であっても使用者は労働者の安全配慮義務を負っており、長時間労働が脳疾患や心臓疾患、過労死につながる可能性について注意する必要があります。

 

ポイント2|拘束時間の限度

拘束時間は一日の始業から終業までの時間を指し、労働時間と休憩時間を合わせた時間のことです。休憩時間が労働時間に含まれるのは、業務の合間に身体を休める時間ではあるものの、会社の指示の下に動く時間であり、拘束されているとみなされるからです。

拘束時間は原則、一日13時間以内であり、最大16時間が限度となっています。しかも15時間を超えるのは1週間に2回以内でなければなりません。1か月の限度は293時間ですが、36協定を結べば、1年のうち6か月まで、年3,516時間を超えない範囲で月320時間まで延長させることができます。

36協定に違反した場合

36協定に違反したらどうなるのか?

36協定をめぐる運用はどのようになされるのでしょうか。以下で、36協定に反する行為と、違反した場合の罰則についてみていきましょう。

 

何が36協定の違反行為に当たるのか

以下のケースは36協定の違反行為に当たります。

  • 36協定を締結せず、残業や休日出勤をさせる
  • 従業員と協議せず、36協定を作る
  • 36協定の上限以上、働かせる
  • 従業員の体調に被害を与えるなど著しい不利益を与える

もし36協定を締結していない、締結しているが従業員と協議をしていないというトラック運送事業者様は、従業員と争いになったとき不利になるのでご注意ください。

 

36協定違反による罰則

会社は適切に36協定を締結し、労働者に不利益を与えることなく運用しなければなりません。では36協定に違反した場合は、どのような罰則を受けるのでしょうか。

 

6カ月以下の懲役

労働基準法第109条では、法第36条に違反した場合の罰則が規定されています。その一つが6カ月以下の懲役です。

 

30万円以下の罰金

もう一つの罰則規定として挙げられるのが、30万円以下の罰金です。

 

厚生労働省による企業名の公表

罰則は経営者など事業に実質的な権限を持つ使用者が対象となるほか、会社自体も対象となり、罰金を支払わなければなりません。

2016年に過労死等ゼロを目指す取り組みの一環で企業名公表制度が強化されました。2017年より厚生労働省は労働関係法令に違反し書類送検された334社を一覧表にまとめ、ウェブページに公表しています。公表期間は送検公表から1年間で、一覧表は毎月更新されていきます。

公表された企業は消費者からの信用を落とすこととなり、社会への影響も甚大で、会社の事業継続を危機に陥らせる大きな制裁を受けることとなります。

 

 

まとめ

36協定とは何か、トラック運送業者が36協定を結ぶときの注意ポイント、36協定に違反したらどうなるのかについて解説してきました。

運用の難しい労働基準法および36協定ですが、トラック運送事業者様にとっては避けて通れないのが現実です。

働き方改革の進む中で、いかに36協定の内容を守っていくかがトラック運送会社にとって大きな課題になるでしょう。

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運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

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