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運送業許可申請に必要な資格をチェックできるページ

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運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

トラック運送業の開業には、運送業許可申請をして国土交通省の許可を得る必要があります。許可取得するための厳しい審査基準が設けられており、「資格」もハードルの一つとなります。

そこでこの記事では、運送業許可申請に求められる資格についてまとめました。ジャンルを問わず、資格を取るには時間や労力がかかるもの。トラック運送業を始めたいと考えているのであれば、出来るだけ早い段階から、少しずつ準備を進めておきましょう。

 

 

運送業許可申請に必要な資格は4つ

運送業を始めるには、4つの資格が必要です。いざという時になって慌てないように、前もって要件を満たしているか確認しておいてください。

 

 

資格1|運行管理者

常勤の運行管理者がいなければ、運送業はできません。トラックの保有台数が29台までは1人、それ以降は30台増えるごとに1人増員するよう定められています。すなわち、トラックが30〜59台なら2人、60〜89台なら3人必要だということです。

これはあくまでも1営業所単位での基準なので、もし営業所がいくつもある場合は、各所に必要な人員を確保します。

なお、1営業所内に複数名の運行管理者が勤務する場合は、その中から統括運行管理者を決めましょう。

 

 

そもそも運行管理者とは何か

運行管理者とは、簡単に言うと「安全運行の指示やドライバーの指導監督を行うポジションの者」を言います。運行管理者は乗務割の作成、休憩スペースの管理、ドライバーの健康状態のチェックなどの業務を担っています。

もし、運転者が適切な休みを取らないまま連続で乗務したり、体調に不安があるのにトラックを運転し、事故を起こしてしまったらドライバーにとっても会社にとっても大きな損害です。

そのような事態を避けるために目を光らせるのが大切な役目。快適な労働環境と運行の安全を守る、非常に重要な役割と言えます。

なお、運行管理者は基本的にドライバーを兼任することができません。

 

 

運行管理者になるための要件

運行管理者になる要件は、次の①か②のどちらかをクリアする必要があります。

 

①運行管理者試験に合格する

1つ目は、運行管理者の資格試験に合格することです。試験を受けるには、「事業用自動車の運行管理に関する実務経験が1年以上」、または「国土交通大臣認定の講習実施機関が行う基礎講習を修了」のいずれかが必要となります。

試験の合格率はおよそ30%前後。正答率6割以上で合格となります。8月と3月の年2回しかチャンスがないので、開業に間に合うよう、十分に事前準備をして試験に臨みましょう。

ただし、試験に合格しただけではまだ不十分。合格通知が届いたら、必ず3ヶ月以内に、「運行管理者資格者証交付申請」を行いましょう。万が一申請をしなかった場合は、合格自体が無効となってしまうので注意してください。

 

 

②一定の実務経験と講習の受講

2つ目は、実務と講習で資格取得することです。具体的には

「事業用自動車の運行管理に関する実務経験が5年以上」かつ「5年間で基礎講習を1回以上、一般講習を4回以上受講」

という要件をクリア出来たら、試験を受けることなく運行管理者資格が与えられます。

なお、地方運輸支局長による解任命令を受けて解任された日から2年を経過しなければ、再任出来ませんので、過去に解任命令を受けた経験がある場合は、この欠格事由に該当しないか確認してください。

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資格2|運行管理補助者

たとえば24時間営業またはそれに近いの運送事業者の場合、不眠不休で働き続けない限り1人の運行管理者が全てを管理することは出来ません。そのため、運行管理者業務の一部をサポートする「運行管理補助者」を選任する必要があります。

その際には、補助者の職務と選任方法などを運行管理規定に明記しておかなければなりません。

なお、運行管理補助者はドライバーを兼任することが可能です。

 

 

運行管理補助者になるための要件

運行管理補助者になるための要件は以下の2つのいずれかです。

  1. 運行管理者の資格を持っている人
  2. 国土交通省が認定する講習実施機関で基礎講習を修了した人

補助者の業務として認められるのは、点呼の一部と運行管理者の業務の補助のみとなります。なお、運行管理補助者は1カ月の点呼の3分の2まで実施することが可能です。

 

 

資格3|整備管理者

トラック運送業を始めるには常勤の整備管理者も必要です。運行管理者と違い、整備管理者1人あたりの管理台数に関して法的な上限はないので、仮に1営業所のトラックの保有台数が100台だろうと1,000台だろうと、整備管理者は1人いれば問題ありません。

なお、整備管理者は、運行管理者やドライバーを兼任することが出来ます。

 

 

そもそも整備管理者とは

整備管理者は、事業用車両の管理全般を担うポジションで、車両点検の実施計画策定や点検・整備の実施、点検整備記録簿の管理、車庫の管理などを行います。

運送事業者が使う車両は、一般の乗用車よりも車体が大きく、多くの貨物を積載して走行することに加え、走行が長距離になるケースも多く、車体への負荷はかなりのものです。

そのため、安全に走行する上で日々のメンテナンスは欠かせません。万が一整備不良があれば、重大な事故につながりかねないため、非常に責任の重い役割と言えるでしょう。

日常点検に関しては、整備管理補助者でも行うことが出来ます。補助者になるには、整備管理者の要件を満たしている、もしくは整備管理者から十分な教育を受けていることが必要です。

なお、整備管理者は運行管理者・補助者やドライバーを兼任することが可能です。

 

 

整備管理者になるための要件

地方運輸局長による解任命令を受けて解任された日から、2年を経過していなければ、整備管理者にはなれません。まずは、欠格事由に該当しないことを確認しましょう。その上で、2つの要件のうちいずれか1つを満たす必要があります。

以下で各要件について見ていきましょう。

 

 

方法1|整備士資格で整備管理者になる

以下の資格のうち、どれか1つを持っていれば、整備管理者に選任することが出来ます。

  •  一級大型自動車整備士
  • 一級小型自動車整備士
  • 一級二輪自動車整備士
  • 二級ガソリン自動車整備士
  • 二級ジーゼル自動車整備士
  • 三級自動車シャシ整備士
  • 三級自動車ガソリン・エンジン整備士
  • 三級自動車ジーゼル・エンジン整備士
  • 三級二輪自動車整備士

ただし、保有する資格が三級の場合は、1年以上の実務経験が必要となるケースもありますので、選任前にきちんと確認しておきましょう。

ちなみに、保有する資格の級によって、単独で対応可能な範囲が異なります。各装置の基本的な整備であれば三級でも出来ますが、足回りやエンジンの分解や修理などは二級以上でなければ出来ません。

さらに一級になると、スペシャリストとして自動車のあらゆる整備に対応可能です。

 

 

方法2|実務経験で整備管理者になる

資格ではなく実務経験で整備管理者になるためには、2年以上の実務経験に加え、整備管理者選任前研修を修了することが要求されます。

実務経験は、運送業の許可を持つ事業者における整備管理補助者としての勤務経験や整備工場・ガソリンスタンドにおける点検整備の経験が2年以上必要です。同時に、勤務先から、実務経験を証明してもらわなければなりません。

もし、複数の会社での実績を合わせて2年以上となる場合は、該当する全ての会社から証明してもらうことになります。時には、過去の勤務先が廃業しており、証明してもらうのに時間がかかったり、証明してもらえなかったりするケースもありますので注意が必要です。

実務経験の証明をもらえる目途がついたら、運輸支局で開催される「整備管理者選任前研修」を受講しましょう。研修を修了したら整備管理者になる要件を満たしたことになります。

試験

 

資格4|法令試験の合格

「法令試験(通称、役員法令試験)」とは運送業許可の申請をした後に受ける試験のことです。試験内容は運送業にまつわる法令が出題され、個人なら事業主、法人なら常勤の役員のうち1人が受験します。試験は2ヶ月に一度、奇数月に行われ、正答率8割が合格ラインです。

2回連続で不合格になると申請そのものが却下され、振り出しに戻ってしまいます。その分事業開始が遅れることになりますので、出来るだけ1回でパスできるように頑張りましょう。

 

 

まとめ

運送業許可を手にするためには、この記事で紹介した資格を含めてたくさんの準備が必要です。資金や人、車両を確保するのも骨が折れますが、数年単位の実務経験が求められる資格の取得もまた大変。

時間を早回しすることは誰にも出来ませんので、開業にあたっては長期戦を覚悟の上、計画的に準備を進めていきましょう。

  • この記事を書いた人

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