弊社シフトアップは年間430件以上もの運送業で起業・開業したいという方からのご相談を受けます。その中でよくある質問は、「いったい何から手を付ければいいのか教えてください」です。
運送業で起業・開業して運送会社を設立し、ビジネスを始めるには一般貨物自動車運送事業許可、いわゆる「運送業許可」が必要となります。
ほとんどの方は、独立して運送業の許可を取るのは一生に一度あるかないかでしょう。ですから初めて運送業許可を取るという方は何から手を付けたら良いかわからないというのは当然のことですね。
この記事では、運送業で起業・開業したいというかの方のために、運送業許可の条件を満たすには何から手を付けていくのが効率的か詳しくご説明します。
運送業で起業・開業しようと思ったらまず「お金」の確保が必用
運送業で起業・開業したいというお客様からの相談で、弊社シフトアップが最初にお聞きすることは、「起業・開業に必要な資金の確保ができるかどうか」です。
なぜなら、ドライバーやトラック、事務所・駐車場の確保ができていても、運送業起業・開業に必要な事業資金が確保できなければ運送業許可の申請ができないからです。
運送業許可を取るために運輸支局へ提出する申請書類の中に、「事業開始に必用な資金」を計算する書類があります。この書類では、運送業を経営するために当面必要な2か月分の燃料代や給料、半年分の車両リース・ローン代金など諸々の費用を計算します。
そして、計算して出した費用を合算した額以上の現金・預貯金があるという証明(残高証明書と言います)を運送業許可申請書類と一緒に提出しないと申請は受付てもらえません。
従って、運送業で起業・開業をご検討中の方は、開業に必要な資金の確保が最重要項目となります。
起業・開業資金の確保ができれば運送業許可申請ができるだけでなく、運送業開業当初の運転資金も確保できたことになりますので、開業に際してつきまとう「お金に対する不安」もおおかたクリアできることになります。
では、運送業の起業・開業に伴う事業開始に必用な資金とはいくらぐらいになるのでしょうか?
運送業の起業・開業に必要な資金の目安は600万円~1,200万円
運送業許可申請時に算出する事業開始に必要な資金の目安は600万円~1,200万円ほどです。これは、弊社に運送業許可申請をご依頼頂いた方の統計に基づいておりますので真実味のある数字なのは間違いありません。
例えば
- 4t車5台が全て中古車の場合:600万円程
- 4t車5台全てが新車の場合:1,000万円程
- 大型車5台全てが中古車の場合:800万円程(このケースは少ない)
- 大型車5台全てが新車の場合:1,200万円程
となります。
上記の金額は、あくまで目安です。中古車と言っても年式が新しく走行距離も少ない新古車を購入するのか、10年落ちの車両を購入するのか、はたまた知り合いから安く売ってもらうのかで大幅に金額は変わってきますのでご了承ください。
自己資金は融資を受けて増やすという方に気を付けて欲しいこと
運送業で起業・開業するための資金が少ない。だから、銀行や日本政策金融公庫から融資を受けて開業資金に充てるとお考えの方。
銀行も公庫も、基本的には運送業許可を取って起業・開業したあとでなければ融資をしてくれません。
許可を取るためにお金が必用なのだから、許可取得前に貸して欲しいですよね。しかし、貸す側の理屈はこうです。
納得いきませんが、これが貸す側の論理です。
ですから、融資を受けて事業資金に充てると考えている方は、なるべく早めに金融機関へ相談に行って運送業許可を取る前に融資をしてもらえるかどうか相談に行ってください。
もし、貸せないと言われたら別の手段を考えましょう。
お金の次は駐車場と事務所・休憩室の確保
運送業許可取得に必用なお金の準備ができたら、次はトラックをとめる駐車場と、運送業を行う事務所・休憩室の確保です。駐車場と事務所・休憩室を確保しないと運送業許可申請は受け付けてもらえません。
ここで疑問が沸いてきますね。駐車場と事務所・休憩室のどちらを先に決めるのが効率的かということです。当事務所に運送業許可のご依頼頂くお客様も、よくどちらを先に決めるかで頭を悩ませます。
駐車場と事務所・休憩室どちらを先に決めるのが良いの?
結論から言うと、まず駐車所候補地を決めましょう。その後、事務所・休憩室の候補地を決めてください。なぜかというと、トラックをとめる駐車場の数の方が圧倒的に少ないため探すのに苦労するからです。
もし、事務所・休憩室から先に決めてしまったらどうなるでしょう?
運送業許可申請の要件の中で、事務所・休憩室と駐車場は直線距離で10km以内(地域によっては5km以内、関東圏の一部は20km以内)になければならないというものがあります。
仮に、事務所・休憩室を先に決めたら、事務所・休憩室のある場所を起点に半径10km以内(地域により異なります)で駐車場を探さなくてはいけなくなります。
ただでさえ、数の少ないトラック駐車場です。もし、事務所・休憩室から23km離れた場所で理想の駐車場が見つかったら、先に探した事務所・休憩室は使えないため、駐車場から近い場所で改めて探すことになってしまいます。
対して、事務所・休憩室はトラック駐車場を探すほどの苦労は要しません。早ければ1日で候補地を見つけることも可能です。
ですから、
という順番で候補地を探すのが鉄則です。
駐車場と事務所・休憩室を決めるときに注意することはあるの?
当事務所に運送業許可取得のご依頼をいただくお客様の2割くらいは、既に駐車場を購入したり、賃貸の契約を済ませている方です。
しかし、このようなお客様に限って高確率で運送業許可申請の要件を満たせない場所であることが多いです。
要件が満たせない場合、お客様は泣く泣く土地を売り払ったり、賃貸の契約を解除するしかありません。当事務所では年に数回はこのようなケースがあります。
よく覚えておいていただきたいことは「不動産仲介業者であっても、運送業許可申請のことを良く知っている方はごく稀にしかいない」ということです。
ですから、たとえ不動産仲介業者に「この場所は運送業許可の取れる場所ですよ」と言われた場所であっても、売買や賃貸の契約をする前に、弊社シフトアップのような運送業許可専門の行政書士事務所へ必ずご相談ください。
運送業許の起業・開業に必要な6人を確保する
運送業許で起業・開業するには、ご自身を含めて最低でも6人の人材を確保しなければいけません。なぜ6人かというと、ドライバー5人と、ドライバー以外で運行管理者となる立場の人が必ず一人必要だからです。
運行管理者のほかに、整備管理者となる立場の方も必要になります。しかし、整備管理者はドライバーを兼任できるため、最低でも6人が必要となるわけです。
駐車場と事務所・休憩室の候補地が決まったら、起業・開業に必要な人員が確保できるか確認しておきましょう。
昨今は人材不足のため、運送業許可申請に必要な他の条件はそろっているが、ドライバーが確保できないので申請ができないというお客様も少なくありません。もし、これから求人の募集をかけるという方は、早急に行ってください。
運行管理者について
運行管理者とは、簡単に言うと安全に荷物の輸送ができるようにドライバーを指導する立場となる人のことです。
万が一、荷物輸送中にアクシデントが起きた場合などの対処をしなければいけないため、運行管理者はドライバーを兼任できないという決まりになっています。
運行管理者となるには、3日間の基礎講習を受講したあとに、運行管理者試験を受験して合格しなければなりません(実務経験で資格を取ることもできますが最低でも5年かかるのでお勧めしません)。
運行管理者の試験は3月と8月の年2回しか行われないため、計画的に受験しないと、運送業許可取得が遅れてしまうこともあるので注意してください。
整備管理者について
整備管理者は、運送業を行う駐車場の管理や、トラックの点検・整備に関する責任を負って事業に使用する自動車の安全確保や環境保全を行う立場の人です。
整備管理者となるにはトラックの点検・整備などを行った経験が2年以上あるか、自動車整備士3級以上の資格が必要です。
補足|手っ取り早く運送業で起業・開業するには営業権の譲渡しかない
営業権の譲渡とは、すでに運送業許可を持っている企業から運送許可を譲ってもらうことです。会社ごと買い取る(M&A)パターンと、営業権(運送業許可)だけを買い取るパターンの2つがあります。
すでに緑ナンバー登録している車両や備品類を買い取ることができれば、すべて一から揃えるよりは早く起業・開業することが可能です。
買取価格の交渉が上手くいかないなどの理由で、結局新規で運送業許可を取る方が多いのは否めませんが、運送業で起業・開業の一つの手段として、営業権譲渡があるということは憶えておいて損はありません。
まとめ
運送業で起業・開業するための手順は、運送業許可取得の要件となる資金の確保、駐車場と事務所・休憩室の確保、そして人員の確保となります。
なかでも一番重要なのが資金の確保です。資金の確保ができないと他の条件が全てそろったとしても、運送業を始めることはできません。
今は資金がないという方もあきらめないでください。弊社シフトアップでは、最初にご相談いただいたときは資金がなくて申請できなかったが、1年後にお金を貯めて申請のご依頼をされるお客様もいらっしゃいます。
運送業で起業・開業したいという方は、運送業許可専門の行政法人シフトアップへお気軽にご相談ください。