運送会社を作って運送業を始めたい方のために、運送業許可専門の行政書士事務所である弊社シフトアップが、今まで頂いた運送会社設立の際によくある質問をまとめました。
悩むことなくスムーズに運送会社を設立するために是非ご覧ください。
運送会社の住所と運送業の事務所住所は同じでないといけませんか?
運送会社を設立したいと当事務所にご相談いただく方の多くが、「運送会社の住所は運送業の事務所の場所と同じでなければならない」と思っています。
結論から言うと、運送会社の住所と、運送業の事務所は別の場所にあっても構いません。具体的にイメージするためにこう考えて頂くとわかりやすいでしょう。
- 運送会社の住所=個人でいう戸籍上の本籍地
- 運送業に使用する事務所の住所=個人で言う住所地(実際に住んでいる場所)
個人の本籍地と実際に住んでいる場所は違っていても問題ないですよね。もちろん同じでも構いません。運送会社の住所と運送業の事務所住所は、個人の本籍地と住所地の関係と同じということです。
もっと詳しく知りたいという方のために以下でもう少し詳しく説明していきます。
運送会社の住所と運送業の事務所住所が違って良い理由とは?
運送会社の住所は、その会社が拠点とする場所(本店所在地と言います)のことです。会社を設立して法務局で登記簿謄本を取ったときに載る住所ですね。
対して、運送業に使用する事務所の住所は、運送業を実際に営む場所のことです。
運送業許可を取るための条件では、運送業を営む場所を定めることは必須になっています。国が許可を与えた運送会社が実際にどこで運送業を営んでいるか把握しておく必用がありますからね。
しかし、運送業を営む場所は会社の住所と同じでなければならないという条件はありません。ですから、運送会社の住所と運送業の事務所住所は違っていてもまったく問題ないということです。
運送会社の住所と運送業の事務所住所を同じにするとき気を付けることはありますか?
運送会社の住所は、運送業の事務所住所と違っていても問題ないことは上で説明しました。当然ながら双方が同じ場所にあっても、これまた問題ありません。
「それなら会社の住所も運送業の事務所住所も同じの方がわかりやすいな」と思った方に必ず理解して欲しい重要なポイントがあります。
それは、運送会社を設立する前に会社の住所=運送業の事務所住所が運送業許可を取るための条件に合致していることかどうかを必ず確認するということです。
運送業許可の条件の中には、「運送業の事務所となる場所が各種法律の条件を満たしていること」が定められています。
日本では「都市計画法」という法律で建物を建てても良い場所と、建ててはいけない場所というのが決められています。これだけならまだ良いのですが、建物を建てても良い場所の中には、さらに事務所を建てて良い場所と、いけない「区分」が定められています。
都市計画法という名前を憶える必要はありませんが、とにかく法律上、事務所を建てて良い場所といけない場所があるということは憶えておいて下さい。
もし、あなたが運送業の事務所住所と会社住所を同じにするときは、会社を設立する前に、その場所が事務所を建てて良い場所にあるかどうかを必ず調べるようにしてください。
会社設立が完了してから、事務所を建ててはいけない場所であることが判明したら会社の住所を変えなくてはいけなくなってしまいます。
会社の住所を変える場合は、法務局へ登録免許税を納めて住所変更の手続きを行わなくてはなりません。余分な経費と時間をかけないためにも、事務所住所が運送業許可の条件に合致していることを調べてから会社設立を行うようにしましょう。
どんな場所なら運送業の事務所に使用することができますか?
ここからは、今までより法律的なお話をします。
会社を設立する際の会社住所=本店所在地は、法律上、事務所が建てられる場所かとうことはまったく関係ありません。ですから上記の都市計画法のことなど考える必要はないです。
しかし、運送業の事務所住所となると話は変わります。都市計画法に違反する場所にある事務所は運送業に使用する事務所として認められません。
そのため、都市計画法上の事務所を立てられる場所、建てられない場所というものを理解する必用があります。以下で具体的に都市計画法について見ていきましょう。
都市計画法上の土地の区分は3つ
都市計画法の第1条で、都市計画法は以下のためにある法律だと書かれています。
この法律は、都市計画の内容及びその決定手続き、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必用な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
これだと何のことだかわかりませんね。簡単に言うと
「建物を建てる場合の都市計画に関する手続きを定めた法律である」ということです。
そして、都市計画法は環境を壊さない都市計画をするために、日本の国土を大きく3つの区分に分けて建物を建てて良い場所と、いけない場所を定めています。3つの区分と建築の関係は以下の通りです。
名称 | 内容 | 事務所使用の可否 |
市街化調整区域 | 基本的に建物を建てられない場所(例外あり) | × |
市街化区域 | 基本的に建物を建てられる場所 | 〇 |
無指定区域 | 基本的に建物を建てられる場所 | 〇 |
基本的に、無指定区域にある建物であれば、建築基準法などに違反する建物でなければ運送業の事務所として使用することが可能です。
理解するのが難しい市街化調整区域と市街化区域の違いについて以下で見ていきましょう。
市街化調整区域
市街化調整区域は、簡単に言うと建物を建てて市街地化することを抑制する区域のことで、基本的に建物を建てることができません。
したがって、市街化調整区域には、基本的に運送業に使用する事務所を建てることができません。
例外として、市街化調整区域であっても
- 都市計画法における「既存宅地」と呼ばれる場所(昭和45年11月前後より以前に既に用途地域が宅地となっている場所のこと。地域により年月は異なります。)
- その地域の集落に一定数以上の建物が建っていること
- 建物を建てたときに事務所使用することを目的としていたこと
などの要件を満たせば、運送業の事務所として使用が可能になります。ですが、このケースに該当するのはレアだと思ってください。
市街化区域
市街化区域は、街を活性化させるために建物を建てることが許された場所のことです。ただし、市街化区域であればどんな建物でも建てて良いというわけではありません。
市街化区域は、さらに12の区分を設けて、建築できる建物の規制をしています。ですので、市街調整区域よりも複雑なエリアである言えます。
12の区分のうち、運送業に使用する事務所が基本的に建てられない場所は以下の3つです。
- 第1種低層住居専用地域(例外あり)
- 第2種低層住居専用地域(例外あり)
- 第1種中高層専用地域(例外あり)
ただし、例外として、上記の区分に建っている建物でも、
- 1戸建て住宅であること
- 住居と事務所を兼ねていること
- 事務所の広さが500㎡未満であること
これら3つの条件すべてをクリアすれば運送業の事務所として使用することが可能です。
運送業に使う駐車場を決めるときの基準はありますか?
駐車場を決めるときの基準は、法律などから見たときと、運送業を始めるかたのこだわりから見たときに分けてご説明します。
運送業の駐車場|法律などから見たときの基準
各種法令や通達などで運送業の駐車場は以下の条件をクリアするように決められています。
- 市街化調整区域内にある屋根付き車庫(例えば、倉庫やテントなど)の場合は、都市計画法や建築基準法などの条件をクリアしていること
- 運送業に使用する事務所から直線距離で10km以内にあること(地域により5kmまたは20km以内)
- 駐車場出入口前の道路幅がトラックの通るのに十分な幅があることが証明できること(道路幅員証明書または車両制限令が取れること)
- 駐車場出入口から5m以内に交差点や急な坂、曲がり角がないこと
- 駐車場出入口から10m以内にバス停や横断歩道、陸橋、踏切がないこと
- 駐車場出入口から200m以内に幼稚園や公園など児童の行き交う場所がないこと
など。
運送業の駐車場|運送業を始める方のこだわりから見たときの基準
運送会社を始められる皆様は、駐車場の中に事務所があることをベストとお考えのことと思います。しかし、現実的には、トラック駐車場は市街化調整区域にあるものが圧倒的に多いため、事務所と駐車場は別の場所にすることを基準として駐車場物件探しをしてください。
なぜなら、これまで弊社シフトアップへ運送業許可をご依頼頂いたお客様がそうであったように、事務所と駐車場の場所は別にした方が運送業許可を取るまでの期間が圧倒的に早くなるからです。
「事務所と駐車場は同じ場所」ということにこだわるすぎると、本来の目的である運送業許可を取得して運送業開業が、いつまでたっても叶えることができない可能性があります。
一日でも早く運送会社を立ち上げ、貴社の事業を軌道に乗せることを一番の目的にして駐車場をお選びください。
運送会社設立時の資本金はいくらにすれば良いですか?
結論から言うと、運送会社設立時の資本金はいくらでも構いません。いくらでも構わないと言われると迷うという方は、平均的な資本金額である300万円~500万円にしていただくと良いでしょう。
現在は資本金1円からでも会社設立ができるため、極端に言えば資本金額は1円でも大丈夫です。とは言え、実際に資本金1円で運送会社を設立する人はほとんどいません。
仮に1円で設立した場合、運送業許可申請時に運輸局から、この会社は本当に運送業を営んでいけるのか質問を受けることになるでしょう(運送業許可が取れないというわけではありません)。
資本金額と事業開始に必要な金額は同じでなければならないの?
運送業許可の条件の中に、運送業を開始してからの当面の経費(運転資金と言います)が確保できていることが定められています。
当面の経費のことを、運送業許可申請の中では「事業開始に要する資金」と言います。事業開始に要する資金は、
- 役員報酬と従業員給与の2ヶ月分
- ガソリン代の2ヶ月分
- 自動車保険や自動車税などの1年分の費用
などを合算して計算します。
弊社シフトアップの多くのご依頼者様は、この事業開始に必用な資金額と、運送会社設立時の資本金額は同額でなければいけないと考えています。しかし、そのような決まりはありません。
例えば、事業開始に必用な資金額が1,000万であっても、資本金額300万円で運送会社を設立し、運送業許可を取ることは可能です。
運送会社の事業目的には何を入れたら良いですか?
会社設立をする場合、事業目的=会社がどんな事業を営むのかを定款の中に記載する必要があります。定款とは簡単に言うと、法人の活動における重要な決めごとを書いた書類のことです。会社は定款に記載した事業目的の範囲内で事業活動を行います。
したがって、定款の事業目的に記載されていない事業は行うことができないため、事業目的の記載も注意が必要です。
よくある運送会社の事業目的の例
当事務所に運送会社設立をご依頼されるお客様が定款に記載する事業目的でよくあるものを下記にまとめましたので参考にしてください。
【事業目的の例】
- 一般貨物自動車運送事業
- 貨物利用運送事業
- 貨物軽自動車運送事業
- 倉庫業及び倉庫管理業務
- 荷役作業の請負
- 産業廃棄物収集運搬業
- 派遣業法による派遣業
事業目的はなるべく少なく簡潔にすることがオススメ
会社設立をされるご依頼者様の中には、事業目的を20個以上盛り込みたいとおっしゃる方もいます。
そうすることは何の問題もありません。設立時には行わない事業だが、将来のビジョンでは行う予定というものは事業目的に入れておくべきです。ただし、事業目的はなるべく少なく簡潔にすることをオススメいたします。
なぜなら、あなたの会社が何をやる会社なのかわかりやすい方が、第3者に対して良い印象を与えられるからです。
あなたが他社の法人登記簿に記載されている事業目的を見た時をイメージしてください。パッと見て、何を主業務としている会社かわかった方が、信用を得やすいと思いませんか?
例えば、事業目的がこんな会社はどうでしょう。私が行政書士開業当初に依頼を受けて設立した会社の事業目的の一部です。
- 一般貨物自動車運送事業
- 貨物利用運送事業
- 中古自動車の輸出入及び販売
- 貸金業
- 金券類の売買に関する業務
- 宝石および貴金属の輸出入及び販売並びに卸し
- 学習塾の経営
- 建築工事業及び土木工事業
- 飲料品、食料品の卸売販売、製造及び輸出入
- 不動産の売買、仲介、斡旋、賃貸及び管理
- 建築工事業及び土木工事業
- オークション企画及び運営業務
- 株式の保有、売買並びにその他の投資事業
これが悪いというわけではありませんが、何を主業務としている会社か伝わりやすい方が、第3者には好感度を与えやすいと思いませんか?
まとめ
運送会社設立時によくある質問をまとめてみました。すべて重要ですが、特に運送会社の住所と運送業に使用する事務所住所を同じにする場合は慎重に場所を選んでください。
運送業許可における事務所の条件を満たしていないと、せっかく作った運送会社の住所を変更しなければいけません。
加えて、運送会社を設立して運送業を始めるということが最大の目的であることを忘れないようにしましょう(事業継続することがビジネスにとって最大の目的です)。
場所へのこだわりが強すぎると、運送業を開始するという本来の目的を見失ってしまうので気を付けてくださいね。
運送会社設立について迷っていることがあるという方は、運送業専門の行政書士法人シフトアップへご相談いただけば、即時に解決いたします。