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運送業のはじめ方 運送業許可

運送業許可を取る3つのデメリットと4つのメリットのまとめ保存版

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運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

いまは白ナンバーで運送をやっている、または運送会社でドライバーをやっており独立を考えている、あるいは既に事業を営んでいるが新規事業として運送業を考えている。

しかし、「運送業許可を取るかどうか迷っている」という方のために、運送業許可を取るメリットとデメリットについてまとめてみました。

 

 

運送業許可を取る3つのデメリット

まずは運送業許可を取るデメリットについてのお話です。

 

デメリット①|白ナンバーよりも緑ナンバーの方が経費がかかる

3ヶ月点検を除いて、必ず必用とはならない経費ですが、想定できるのは以下のようなものです。

 

 

3ヶ月点検にかかる経費(かならず必用)

白ナンバーで走っているときは最低限車検を受けていれば法律違反にはなりません。しかし、運送業許可を取って緑ナンバーになったら、車検のほかに3ヶ月点検を実施することが義務付けられます。

そのため、3ヶ月ごとにトラックを整備工場に出すことになり、白ナンバーに比べて経費がかかることになります。

 

 

行政書士に許可取得を依頼した場合の経費(不要なケースもあり)

運送業許可を取るには、営業所を管轄する地方運輸支局へ申請書類を提出しなければいけません。

  • 書類作成は苦手
  • 面倒なことはやりたくない
  • 時間がかかりそうなことは外注した方が良い

という方は、運送業許可申請専門の行政書士に書類作成を依頼することになります。そのため、行政書士に支払う報酬が必要です。

ちなみに、運送業許可申請の行政書士報酬は40万円~60万円。平均50万円ほどです。

もし、書類作成は得意だ、難しくても良いからチャレンジしたい、許可取得にかかる経費を1円でもいいから抑えたいという方は、実質的な経費は不要です。

 

 

税務顧問を依頼した場合の経費(不要なケースもあり)

今までは会社勤めだった、または白ナンバーで個人事業だったのでご自身で確定申告をしていた。しかし、運送業許可取得にあわせて、税務顧問を税理士に依頼するという場合は、税理士に支払う顧問報酬が必要となります。

税務顧問の月額報酬は、さまざまですが1万円~4万円ほど。月額顧問料の6ヶ月分が決算申告報酬というのが一般的です。

行政書士に運送業許可申請の依頼をするときと違い、税務顧問は毎月の支払いが発生するケースがほとんどです。

もちろん、すでに税務顧問を依頼しているという方には不要の経費です。

駐車場2

 

事務所・駐車場を新たに借りたり購入する場合の経費(不要なケースもあり)

すでに事務所も駐車場も確保しているいう方であっても、運送業許可を取るための条件に合致しない場所であるケースがあります。その場合、新たに事務所・駐車場を借りたり購入する必用があります。

新たに借りる場合は敷金や保証金、購入する場合は購入費(ローンの場合の頭金や支払い月額を含む)が発生します。

運送業許可取得には、事務所・駐車場に関する様々な条件をクリアしなければいけません。すでに賃貸・購入している場合でも、必ず専門家に依頼して条件に合致している場所かどうか確認を取るようにしてください。

 

 

デメリット②|運送業事務を行う必要がある

運送業許可を取得すると、業務に関することはほぼすべて日報や点呼簿、運行指示書などの帳票類で記録します。この帳票類を記録・保存することを「運送業事務」と言います。

運送業はトラックを使って荷物を運ぶことが仕事です。事務職と違い、トラック運転者は荷物の集荷や配送のために一旦外に出れば、業務の遂行はハンドルを握るドライバー個人にゆだねられます。

したがって、何時間運転し、待機をし、荷物の積み下ろしをしたかといったことは日報やタコグラフで確認するしかありません。

そのため、運送事業者には日報やタコグラフ、点呼簿などの帳票類で勤務を管理すること義務付けられています。

 

 

デメリット③|運転者の労働時間などを管理しなければいけない

運送会社のトラックドライバーは、事故防止の観点から労働時間などについて細かなルールが法令で決められています。

その昔、法令の整備がなされていなかった時代のトラックドライバーの労働時間は過酷なものでした。過酷な労働は交通事故を多発させ、死亡事故増加の原因となりました。これを受けてトラックドライバーの労働時間を規制する法令が定められたのです。

※これを改善基準告示と言います。

 

例えば、改善基準告示では1日の拘束時間は13時間まで、最長でも16時間までというようにルールが定められています。

あまりにひどくルールを破ると、一定期間トラックのナンバーを運輸局へ返納するなどの処分を受けることすらあります。ですから、運送業許可を取得したら定められたルールを守って事業運営しなければいけません。

 

運送業許可を取る4つのメリット

次は運送業許可を取得するメリットについてのお話です。

 

メリット①|法律的に認められた運送業者として仕事ができる

運送業をこれから始めるという方の多くは、現在は個人事業主か、個人事業主に近いかたちで運送業をやっていらっしゃいます。このような方は、いわゆる名義借りの状態となります。実際に当事務所に運送業許可のご依頼をいただく方の6割ほどは名義借り状態です。

この名義借り。端的に言えば「違法」(貨物自動車運送事業法違反)です。

ですから、警察に捕まっても文句は言えません。

 

ちなみに名義貸し(看板貸し)と名義借り(看板借り)は以下の状態のことを言います。

  • 名義貸し=運送業許可を持ちながら個人事業主に緑ナンバーを貸している状態の運送会社
  • 名義借り=運送業許可を持っている運送会社の名前を借りて、その運送会社の従業員として運転者をやっている個人事業主の状態。

運送業許可を取得すると、法律的に認められた形で運送業ができます。ということは違法な状態から脱出できるということです。

 

昨今は運輸局や警察が名義貸し、あるいは名義借りの状態を厳しく取り締まる傾向にあります。実際に当事務所には、「名義借りが警察にばれて裁判を起こされており、どうしたら良いか」というご相談も入っています。

運送業許可を取れば法律的に認められた形で運送業ができるというのは、ある意味当然のこです。しかし、名義借りの個人事業主が多い中、何におびえることもなくビジネスができるというのは大きなメリットと言えます。

 

 

メリット②|銀行などから融資が受けやすくなる

上記で説明した「名義借り」の状態で、トラックを買いたいからお金を貸してくださいと銀行に言っても貸してくれません。

なぜなら、運送業は許可を取らないとできない「許可業務」だからです。ですから、法律を守れないような人にお金を貸しても返してくれるわけがないと銀行は判断するわけです。

そもそも銀行が違法行為に加担するようなことをしてくれるわけがないですよね。

 

対して、運送業許可を取得していれば、それだけで信頼のできる事業者としてみられます。そのため、個人であるか法人であるかを問わず銀行から融資を受けられる可能性は一気に高くなります。

 

 

メリット③|営業活動がしやすくなる

これも名義貸しの話と絡みます。取得の難しい運送業許可を取っていれば第三者から一定の信頼を得ることができます。

運送業を継続するには、荷主確保のためには営業活動を行う必要があります。ビジネス上の取引は信頼のうえに成り立っているため、取得の難しい運送業許可を取っているだけで信頼に値し、荷主確保が容易になります。

ただし、運送業許可を持っていれば、ざくざく仕事が取れるわけではないので注意してくだい。正しい努力をした人だけが報われるのがビジネスの世界です。

 

 

メリット④|お金を稼ぐ事業の柱を増やせる

これは、現在は別事業をやっている方のお話です。弊社に運送業許可取得のご依頼をいただく方の3割は、新規事業として運送業を行う方です。

許可取得の理由は、得意先から運送業許可を取って欲しいと言われた方と、積極的に新規事業として運送業を展開していきたいという方に大別できます。

 

いずれにしても、現在の事業に加えて運送事業者として、荷物を運んで運賃をもらうことが可能になるため、お金を稼ぐ事業の柱=キャッシュポイントが増えることになります。

弊社のお客様の中には新規事業として運送業許可を取り、初年度から年商が2,000万円以上増えたという企業様もいらっしゃいます。

 

 

まとめ

運送業許可を取るメリットとデメリットについてまとめました。運送業許可を取ると、銀行や荷主から一定の信頼を得られます。同時に融資を受けやすくなったり、営業行為がしやすくなったりします。

反面、取得した運送業許可を守り抜くためには、定められたルールにのっとって経営することが必要です。例えば、3ヶ月点検の実施や帳票類の作成・保存、ドライバーの拘束時間等の管理など。

 

どちらを選択するかはあなたの決断に任せるしかありません。しかし、運送業許可を取るための条件が、今後厳しくならないという保証はありません。むしろ、厳しくなる可能性が断然高いと言えます。

運送会社に勤務しているが独立したい、運送行為を行っているが許可はない、新事業として運送業に魅力を感じているという方は今のうちに許可取得することをおすすめします。

 


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