トラック運転手の休憩時間管理

労働基準法 運送業110番

トラック運転手の休憩時間管理について5分でかわる記事

kglo-kawai

運送会社に12年勤務した行政書士。運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★著書「行政書士のための運送業許可申請のはじめ方」

トラック運送業において運転手の労働時間管理は難しい問題となっており、特に休憩時間管理は困難な面があります。休憩時間が分からなければ、労働時間を確定させることはできません。

また長時間労働は居眠り運転や交通事故、過労死といった労働災害の一因となります。

未払い残業代の問題でも争点となりやすいのが休憩時間管理で、なかには会社側が荷待ち時間を休憩時間とし、残業代を払わないとするケースもみられます。

この記事では、どのように労働時間管理を行うのが運送会社にとって理想なのかについて、休憩時間にフォーカスしながら解説いたします。

 

 

まずはトラック運転手の休憩時間に関する法令の規定を知ろう

休憩時間について、労働基準法と自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(通称、改善基準告示)」の2つの法令による定めを理解しましょう。

労働基準法では、会社に拘束されており指揮監督下に置かれているが、労働していない時間が休憩時間と定められています。休憩時間は、労働時間が6時間から8時間の場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上与えないといけないとされています。

トラック運転手の労働条件の基準を示す労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(いわゆる改善基準告示)」では、連続運転時間は4時間が限度であり、4時間運転したら30分以上の休憩が必要とされています。

改善基準告示では、休憩を分割して与えることが認められており、4時間以内に運転を中断する場合、少なくとも1回10分以上、合計30分以上の休憩を分割して取れば法令違反となりません。

 

 

荷待ち時間は休憩時間に含まれないって本当?

労働時間以外は休憩時間に当たりますが、荷待ち時間はどうなるのでしょうか。結論から言うと、荷待ち時間は休憩時間には含まれません。作業をする時間と荷待ち時間を合わせて労働時間とみなされ、それ以外が休憩時間となります。

ただし荷物の発着時刻が指定されている場合の荷待ち時間に関して、その時間中に休憩を1時間設けている場合で労働者が自由に時間を利用できるならば、休憩時間とみなすという行政通達もなされています。

いずれにしても荷主と協力して適切な運行計画を実行し、できるだけ荷待ち時間を減らしていくことが必要でしょう。

わかっているが改善するのは難しい。そんな声が聞こえてきそうですが、法令違反とならないような会社運営をしないといけないのが、これからのトラック運送業界です。

山道を走るトラック

トラック運転手の休憩時間管理の問題点

ここからはトラック運転手の休憩時間管理の問題点についての解説です。

まずは、トラック運送会社の管理職であれば一度は感じたことのある労働時間と休憩時間の把握のしにくさから見ていきましょう。

 

 

トラック運転手の労働時間と休憩時間はなぜ把握しにくいのか?

トラック運送会社は、運転手が一度トラックに乗って運行開始すれば、業務の遂行は運転手任せにならざるを得ません。特にフリー便では、どこで何分の休憩を取るのかはドライバーの意思しだいです。

筆者はよく運送会社でアナログタコグラフを拝見しますが、休憩なのか待ち時間なのか判別がつきにくい場合がよくあります。

デジタコの場合でも、運転手がボタン操作をしなかったり間違えたりすれば休憩か荷待ちかは運転者以外では判断がつきません。

車両位置はGPSで判明しても、休憩をいつとっているかは、GPSでは正確には把握することは不可能です。

このように、出社時刻と退社時刻はタイムカードで管理できるかもしれませんが、運転業務中の時間については運転手の日報やタコグラフなどに頼る割合が多くなるため、労働時間と休憩時間の判断がしにくくなるという事実があります。

 

 

法令から見る休憩時間かどうかの判断ポイント

法令から休憩時間かどうかを判断するポイントとしては、

  • 駐車して車から離れられるかどうか
  • 積荷を監視する必要があるかどうか
  • 自由に時間を使えるかどうか
  • 作業開始時刻が定まっているかどうか

などが挙げられ、これらを総合的に見て判断する必要があります。

 

 

トラック運転手の休憩時間はこうやって管理する

上記のような問題点を抱えるトラック運転手の休憩時間管理に関して、どのような解決策があるのか以下で見ていきましょう。

 

システムによる客観的な管理

時間管理を行うシステムとしては、デジタルタコグラフがあります。

従来、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上のトラックにタコグラフの装着が義務付けられていましたが、2014年の法改正により、装着義務化の対象が車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上のトラックに広げられました。

デジタルタコグラフによって位置情報やエンジンの回転数などが記録され、自動的に日報を作成することも可能となります。またデジタルタコグラフと給与システム、会計システムなどと連携できるソフトウェアを用いれば、運転手の統合的な労務管理が可能です。

 

 

運行管理者などによる確認の徹底

運行管理者は、労働者の勤務日ごとに始業時刻、終業時刻などを確認、記録し、それをもとに労働時間を把握する必要があります。

2t車などでタコグラフを装着していないことによる日報での自己申告制の場合は、申告された労働時間が実際の労働時間に合っているか実態を調査することも大切です。

トラック運送会社は運転手の労働時間をしっかり管理し、記録を保存し、その上で管理上の問題点の把握とその解消をしていきましょう。

 

 

トラック運転手の教育

何度言っても休憩時間をしっかりと記録しない運転手がいるというのはトラック運送会社にとってはよくあることです。

どんなにシステムや管理体制が整っていても、運転手が

  • 最低限の正しい法令知識を持つ
  • 法令順守できないことへの危機意識を会社と共有する

この2つを徹底しないと適切な休憩時間の確保は難しいでしょう。

言うことを聞かないから放置しておくという管理者の方もいらっしゃいますが、例外を認めるとルールをしっかり守っている運転手に悪影響を及ぼす可能性があります。

社会的な義務を果たすため、また、人材定着のためにトラック運送事業者様は運転者教育もしっかり行いましょう。

 

 

まとめ

トラック運転手の休憩時間を管理することは人材定着や事故防止にもつながる重大な要素です。管理者・運転手の双方がしっかり法令を理解し、管理体制を築いて下さい。

人材不足の今だからこそ、運転手の休憩時間を把握・管理することが勝ち残る運送会社の条件だと筆者は考えます。

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